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第1戦〜勝負に懸ける打撃職人のミリ単位のこだわり〜



▲センターの頭上を越すサヨナラ打を放った吉村に、ソフトバンクのナインが抱きつく



 1対2の9回一死二、三塁。吉村が試合を決めた。前打者の中村を迎えた時点で、日本ハムはピッチャーを先発の浦野から増井にスイッチ。吉村はロッカーへ走り、通常使う34インチより0.5インチ短いバットを選んだ。

「前の打席で自分のスイングはできたんですが、少し詰まったので」

 7回に浦野と対峙。3-2から真ん中高めの146キロを好感触でとらえたが、二ゴロに終わっていた。増井の球速はそれ以上。自らの始動を早めるのではなく、バットの長さでその差を埋めた。「直感です」。それが当たった。今季代打で18打数9安打10打点の勝負強さ。それはプロ生活12年のバットマンの経験の凝縮でもあった。「技もある。勝負強さもある」と今季限りで退任する秋山監督を絶賛させた一打だった。

▲9回無死一、二塁で好投を続けていた浦野が降板。「9回裏続投」の判断が裏目に出た



第2戦〜四番の重責を果たす、中田翔の3戦連続弾〜



▲相手のミスで逆転した直後に、中田がたたみ掛けるように左翼席へ2ランを打ち込んだ



 四番の存在の大きさを知らしめる一打だった。ソフトバンク・今宮の失策で2対1と逆転した直後の二死一塁。日本ハムの四番・中田のバットが火を噴いた。「甘いボールをしっかりと振り切ることを考えていた」。武田の甘く入ったスライダーをとらえた打球がレフトスタンドに弾み、試合は決まった。

 栗山監督も絶賛だ。「さすが四番。こっちは全部ホームランを打てると思っている」。シーズンの3割打者が一人もいない打線。もう一人の核である三番・陽はCSを通じて21打数2安打と眠りから覚めないまま。その中での3戦連発はすべてが価値ある本塁打で、これぞ四番の仕事だった。「たまたま」と謙遜しながらすべての責任を負う主軸。短期決戦において、これほど心強いものはない。

▲6回二死二、三塁から陽の遊ゴロを名手・今宮がまさかの悪送球。日本ハムに決勝の2点が転がり込んだ



第3戦〜クリーンアップの4発2ケタ得点で左腕エース復活への勝利〜



▲今季わずか3勝ながらも抜てきに応えた吉川。「CSでも気負いなく、普段どおりのピッチングができた」



 第3戦、日本ハム・栗山監督のテーマは、吉川再生のきっかけを見いだすことだった。「なぜ、アイツらしくなかったのか」。今季開幕を任せた左腕がシーズン3勝4敗、防御率4.88に終わった。それでも「最も期待している」と語る左腕に来季以降につながる何かをつかんでほしい。その思いで託したマウンドだった。

 らしさ、とはエースの気概だ。「ストライクゾーンでしっかり勝負できた」。6回を8安打3失点の結果だけを見れば評価は難しい。しかし、マウンドで見せた勝負する姿勢は、強者に立ち向かうチームの象徴としてふさわしいものだった。そしてそれを可能にしたのが2回までに7点を奪い、ソフトバンクのエース・攝津をつぶした打線。陽が3安打5打点と目覚め、下剋上の態勢を整えた。

▲CS5試合で21打数2安打だった陽が2打席連続弾。「ずっと打てなくて泣きそうだったので一本出て気持ちが楽になりました」



第4戦〜ルーキーの好リリーフから“3本の矢”で王手!〜



▲好調な日本ハムのクリーンアップを3人で抑えた森。五十嵐、サファテと“無安打リレー”をつないだ



 ソフトバンクが勝利し、CS突破へ王手をかけた。連敗の重苦しいムードを一掃する柳田の先頭打者本塁打で幕開け。しかし、5回までに10安打を放ち、3つの四球を得ながら、3併殺の拙攻もあって4得点。先発の中田は5回までに3安打5四球2失点で、秋山監督を「どうなることかと思った」とヤキモキさせた。

 不安定な流れをグッと引き寄せたのは7回の森の投球だ。陽、中田、小谷野と並ぶ好調の日本ハムクリーンアップに真っ向勝負を挑んで三者凡退に斬った。「よく頑張った」と指揮官を納得させる働きだった。

 勝利の方程式に定着し、修羅場をくぐってきたルーキー。この試合も「とにかく腕を振る」と、シーズンと変わらぬ姿勢を貫いた。臆することなく攻めた価値ある16球だった。

▲先頭打者本塁打の柳田。低めのボールをスタンドへ運び、「打ったのはツーシーム。うまく拾えました」



第5戦〜終盤の逆転につないだチーム総動員のビッグプレー〜



▲11回二死満塁で中島がサファテから右前へ決勝2点適時打。オリックスとの第1戦で決めたセーフティー・スクイズに続く決勝打



▲同点に追いついた8回から2イニングをともに三者凡退で切り抜け、12回の逆転劇を呼び込んだクロッタ



 勝敗を分けたポイントは0対4の5回無死一、二塁の日本ハムの守備にあったと見る。5点目を奪えなかったソフトバンクに対して、日本ハムは終盤に攻勢をかけて延長11回に勝ち越しに成功。対戦成績を3勝3敗として(アドバンテージを含む)、最終決戦に持ち込んだ。

 「今日の大きなポイント。劣勢だったのでリスクを背負ってでも勝負をかけないといけなかった」(白井一幸内野守備走塁コーチ兼作戦担当)

 打席に二番・明石を迎えた初球、一塁・小谷野と三塁・近藤が猛チャージを仕掛けるシフトを敷いた。投手・大谷はバントが最も難しい高めの速球を投げ込み、結果はファウル。そして2球目はチャージすると見せかけストップする。これがバスターに切り替えさせるトリックで、バッテリーが選択したヒザ元のスライダーもこのプレーの肝。手を出しやすいが当てるのは困難な球で、思い描いたとおり、明石の空振りを引き出した。

▲ベンチを含めた日本ハムの作戦にはまり、明石がバント失敗。前日に3安打の男もこの日は5打席無安打に封じられた



 これで2ストライクと追い込むと明石を三振。続く内川、李を打ち取り、このイニングをゼロに抑えた。「プランどおりにいきましたね」。白井コーチもうなずくビッグプレーで呼び込んだ勝利。「あと1試合できる」。栗山監督にチームの成長を確信させる勝利だった。

▲12回裏先頭の李大浩の鋭い打球を右翼・西川がダイビングキャッチ。7回には1点差に迫るフェンス最上部直撃の三塁打を放った


▲決勝タイムリーの中島卓也「ずっとチャンスで打てていなくて、最後あそこで打たないと男じゃないと、なんとか自分で決めようと思って打席に入りました。最初に4点失い、なかなか難しい試合でしたけど、なんとか追いついて、本当にみんなの力で勝った試合だと思います」

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