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FA宣言期限最終日の11月11日、、国内FA権を行使することを表明した金子千尋。果たして沢村賞右腕が見据える視線はどこにあるのか。その裏側に迫った。

※本記事は金子投手が右肘の遊離軟骨除去手術を受ける方向であることを表明する前に書かれた内容となっております。
文=喜瀬雅則(産経新聞) 写真=BBM

日米野球では11月14日の第2戦(東京ドーム)に先発した金子。モーノーに2ランを浴びるなど結果は5回3失点だった



[金子投手のここ1カ月の動向]
10月11日 CSファーストステージ第1戦に先発(6回3失点)
10月27日 沢村賞に満場一致で初選出
11月11日 国内FA権を行使を表明
11月14日 日米野球第2戦に先発(5回3失点)
11月23日 球団の健康診断後、右肘に違和感を覚える
11月24日 球団ファン感謝イベントに参加、イベント後、今オフのポスティングによるメジャー移籍を断念
11月25日 右肘の遊離軟骨除去手術を受ける方向であることを表明

今がMLB挑戦の絶好機


 胸に秘めていたメジャー・リーグへの熱い思いを、オリックス・金子千尋が公にしたのは、投手の最高峰の証ともいえる沢村賞の初受賞が決まったその朗報が、自らの元へと届いた10月27日のことだった。「来年、自分の進路を考えたときに、国内FA権もそうだし、メジャーのチャンスもある。あそこでやってみたい気持ちは持っています」

 今季取得したのは国内FA権。メジャー挑戦には、オリックス球団にポスティング・システムの行使を要求し、それを認めてもらわなければならず、自分の意志だけでは動けない。それでもメジャー挑戦への強い意志を打ち出したことに、これまでの金子の言動からすれば、意外な感すらあったのは確かだ。

 例えば、広島前田健太の場合なら、メジャーへのあこがれをかねてから公言、球団側とも数年来、ポスティングでのメジャー挑戦の可能性を話し合っていたのは周知の事実。対照的に金子からこれまでメジャーへの夢が語られたことなど、皆無に近かった。それどころか、自らのメジャー挑戦に関し、むしろ“あり得ない”と受け取れる発言もしていた。

 取材メモを遡ってみよう。

 2013年12月19日。2度目の交渉の末、年俸2億円(推定)で契約更改した後の会見で、メジャー挑戦を打ち出していた楽天田中将大(現ヤンキース)に関する質問にこう答えている。

「日本で24勝0敗。そういう投手がメジャーでどういう活躍ができるのか、単純に見てみたい思いはあります。メジャーへの思い? ないことはないですが、現実的に考えているかといえば、考えていません」

 しかし、ここ7年で2ケタ勝利を6度マーク、ダルビッシュ有(レンジャーズ)や田中と投げ合ってきた実力は、いまや日本球界NO.1といっても過言ではない。さらにオリックスは、00年オフにイチローをポスティング・システムでメジャーへ送り出した経緯もある。

 そうした状況を踏まえ、メジャー側の方が「メジャー挑戦の可能性がある」とにらみ、早くから動き出していた。金子の登板日には、青い目のスカウトたちが、ネット裏でスピードガンを握り、メモを取る姿が日を追うごとに増えた。その存在が目に入らないわけがない。金子の表現を借りれば「徐々に」メジャーへの興味が強まってきたというのだ。

 来年1年間、順調にプレーできれば、海外FA権は取得できる。しかし、その1年に何が起こるか分からないのが、この世界の怖さ。故障でもすれば、権利取得へのスケジュールは、一気に狂う。ここが、まさしく“決断の絶好機”だった・・・

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