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DeNA・今永昇太が手に入れた“初勝利”の重み

 

「過去の自分に勝った」6試合目の初勝利


防御率は2.03となりリーグ4位につける


 ベンチで迎えたゲームセットの瞬間、ようやく表情が緩んだ。5月6日の広島戦(マツダ広島)、ドラフト1位左腕・今永昇太が6度目の先発で待望の初勝利を手にした。

 3月29日、巨人戦(横浜)でのプロ初先発から過去5試合、好投しながらも味方の援護に恵まれなかった。登板中のDeNA打線は、33イニングでわずか2得点と沈黙。しかし、0勝4敗と勝ちに見放されても、今永は「力のない人間は練習するしかない」と要所でボールが甘く入る自身のふがいなさを責め、ポーカーフェースを貫いた。

 試合序盤から振り続く雨に濡れたマウンド。「決して調子は良くなかった」と初回2四球と苦しむ。それでもストレートを主体に要所で変化球を織り交ぜ、粘りの投球。特に左打者アウトコースへのスライダーが効果的だった。

 これまでルーキーの好投に応えることができなかった打線だったが、この日は駒大で3学年先輩である白崎浩之戸柱恭孝が援護した。2回には白崎が先制となる左前適時打、6回に追加点となる中前打を放ったのはバッテリーを組む戸柱だった。「先輩2人が打てなかったらカッコ悪い。今永をラクにさせたいと思い打席に入りました」と打線が一つとなり、6回で6得点と新人をバックアップした。

2回には一死から自らがスクイズを決め3点目


 自己最多の125球を投げ7回無失点で初勝利。「単純に(初勝利が)遅過ぎた。これだけ勝つのが大変だとは……。今日は広島ではなく、過去の自分に勝てた」と新人らしからぬ堂々とした口調で今永は試合を振り返った。「(7回まで登板したことについて)ラミレス監督が何を自分に求めているのか考えながら投げた。技術ではなく気持ちだった」と気迫を前面に押し出したピッチングに、指揮官も「これでイマナガの成績は1勝4敗になったが、勝敗が逆でもおかしくない投球をしていた。彼の一番いいところは自信を持って投げているところ。将来はエースになってもらいたい投手」と初勝利を手放しで褒め称えた。

ウイニングボールを片手に笑顔。試合には北九州から父・孝司さんも駆け付けた


 今年の1月9日、新人合同自主トレから野球ノートをつけ始めた。プロとして成長していくために必要なことを書き留めるためだ。「初登板から1試合1試合ノートに書いて反省してきた」。初勝利までに要した5試合は決してムダにはならない。その悔しい経験は血となり、肉となり、骨となり、今後のピッチングに生かされるだろう。

「これからは積み重なっていく1勝。自分の借金を取り除くために、投げる試合は勝ちたい」
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