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ケッペル 投手 #31

長い闘いの末に見えた奇跡のカムバック

 



 光が見えてきた。ボビー・ケッペルが絶望の淵から舞い戻ってくる。昨年4月に右肩関節唇を損傷。その約2カ月後に選手生命をかけてクリーニング手術を受けた。そこから約1年間の長いリハビリ生活を経て、早ければ交流戦終了後にも一軍復帰する見込みになった。二軍でも実戦登板できるまでになり、栗山監督が低迷脱出の起爆剤になる存在に指名するほど期待の右腕だ。

 ようやく表舞台へとカムバックする準備ができてきた。今季で来日4年目。1年目の10年は12勝、翌年は14勝と日本でのキャリアを順風満帆に築いてきたが昨季、一時停止を余儀なくされた。開幕から2試合に先発登板しただけで離脱。担当医と相談した結果、ケッペルは「いち早く手術をすることだった」と最善の決断をした。そこから長く、苦しい闘いに突入した。

 痛恨の思いが原動力になった。米国を離れ、日本ハムでプレーする最大のモチベーションは主力としてチーム貢献をするという1点だけ。「このチームで優勝したい」と口癖のように話していた。その悲願を皮肉にも昨季達成。自身が戦列を離れているさなかに仲間たちが歓喜に酔いしれていた。複雑な葛藤があった。だからこそ、復活への強い執念がある。

 先発ローテを6人そろえたい交流戦終了後に栗山監督はケッペルを構想の1人に据えている。周囲の仲間からも絶大な信頼がある人間性も反攻のパワーにつながるとの思いもあり、巻き返しへのキーマンに指名されている。復活を熱望される助っ人は「少しずつだけど、自分の中で感触は良くなっている」と言う。ようやく長い闇を抜けるカウントダウンに入った。
オーロラビジョン

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