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大田阿斗里 投手 #58

二軍暮らしのつらさを糧に

 



 緊迫感が包むマウンドに立っても、決してひるまない。「初めてのクライマックスシリーズ(CS)争い。すごくやりがいがある」。帝京高時代には甲子園で1試合20奪三振の快投を披露した大田阿斗里は、プロ6年目で自身の働き場所をつかみ取った。

 これまでの最多試合登板は入団3年目の16試合。だが当時は消化試合の雰囲気の中、将来を見据えた期待感が一軍招集の要因だった。いまは置かれている立場も責任感も異なる。CS圏内に踏みとどまるチームで、勝利に欠かせない中継ぎとして腕を振る日々だ。

 プロ入り後、オフは母校の帝京高や横須賀の二軍施設で1人トレーニングを続けていた。だが昨オフは初めてチームメートの懐に飛び込み、一緒に練習することで技術の習得に励んだ。「僕的にも後がなかった。年齢から見たら戦力にならないといけない。危機感しかなかった」と言う。

 自身の投球術についても見直した。「これまではコースを狙ったり、できもしないことをしようとしていた。もっと球の力とか、ストライクゾーンで勝負していこうと思った」と気持ちの強さを前面に出し、大胆に投げ切ることに活路を見いだした。

 登板ごとに増す経験値は、3年前とは比べものにならない。ピンチの場面や逃げ切りを狙う展開などで起用され、経験したことのない1勝の重みを感じている。それでも「気持ちの弱さは相手に伝わるし、迷いがあれば打たれる。打たれることも当然あるけれど、恐いと思ってはダメ。一軍で投げられないつらさに比べたら、どうってことはない」と言い切れる。二軍暮らしが続いた経験を糧に、心身ともにたくましくなった。
オーロラビジョン

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週刊ベースボール各球団担当による、選手にまつわる読み物。

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