週刊ベースボールONLINE

福田秀平 外野手 #37

3年がかりの成功率10割

 



 3 年がかりだった。8月2日の西武戦(ヤフオクドーム)の8回二死、ラヘアの代走で一塁ベースに立った福田秀平は、狙い澄ましていた。代打・山崎の4球目に「その時」は訪れる。完璧なスタートで二塁を陥れた。2011年6月28日の楽天戦(東京ドーム)以来31回連続の盗塁成功だ。3シーズンにまたがって到達した数字であるため、1964年の南海・広瀬叔功に並ぶプロ野球タイ記録とは認められないが、背番号37は満足げな笑顔を浮かべた。

「自分が出る場面は1点差や2点差の代走が多かった。その中で高い成功率を目指してきた。31回は目標にしていた。決められてよかった」

 長い道のりだった。盗塁は昨年7月18日のオリックス戦(ヤフードーム)以来380日ぶりだった。昨年11月に左ヒザ軟骨損傷による内視鏡手術を受けた。当初は今季の開幕には間に合う予定だったが、一向に痛みは引かない。「このまま痛みを抱えたままになるかもしれない」。何度も不安が頭をよぎった。だが、毎週、右ヒザへのヒアルロン酸注射を欠かさず、続けたリハビリの成果は、少しずつだが患部を元通りにしていった。昔と今。プロ野球は進化し、クイックモーションの導入、けん制の精度など、塁間の距離は変わらずとも、成功させる難易度は格段に上がった。「絶対、失敗できない緊張感もあった」と福田。勝敗を分ける一発勝負の緊張感の中、成功を続けて達成した偉業だ。

「広瀬さんはきっとこの記録や自分の名前すら、知らないんじゃないですかね」と自嘲気味に笑った。だが、例え「公式記録」ではなくとも、足のスペシャリストが残した足跡は色あせるものではない。
オーロラビジョン

オーロラビジョン

週刊ベースボール各球団担当による、選手にまつわる読み物。

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング