悔しさだけが残る1年だった。2009年に打率.327を記録し首位打者を獲得した鉄平は「これだけ試合に出なかったことはなかった。自分の実力不足です」と唇をかんだ。2013年オフに
後藤光尊との交換トレードで
オリックスへ。移籍1年目は50試合出場、打率.227、1本塁打6打点。出場50試合はレギュラーを獲得してからワーストの数字だった。
契約更改では500万円減の年俸3500万円(推定)でサイン。球団からのダウン提示にも「当然の結果だと思っています」と厳しい表情で現実を受け止めた。巧みなバットコントロールでヒットを積み重ねてきた天才打者も、ここ数年は満足した結果を残せていないのが現状だ。今シーズンはチームが6年ぶりにAクラス入り。糸井、坂口、駿太ら激しいレギュラー争いの中でポジションを確立することはできなかった。
それでも「これまでの自分は打席数がある中で勝負するタイプだった。いろいろな経験をすることができたのは収穫」と前を向く。新天地では代打、代走、守備固めと役割をこなし、勝負強い打撃を見せる場面もあった。8月16日の
ソフトバンク戦(京セラドーム)。5対5の8回二死一、二塁の場面で左中間を破る決勝のタイムリー二塁打を放ちヒーローになった。代走で途中出場という厳しい状況での一振りに「驚くほど冷静に打席に入れた」と振り返った。
すでに来季に向けスタートを切っている。シーズンが終わっても神戸市内の球団施設で毎日のように自主トレを行う日々が続いている。「一軍でやってこそ意味がある。このまま終わるわけにはいかない」。輝きを取り戻すため元首位打者はバットを振り続ける。