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【社会人 Amateur】

第84回都市対抗野球大会

復興のシンボルが快進撃見せる
日本製紙石巻が初の8強進出

 青く染まった三塁側スタンドが、ナインの背中を押していた。東京ドームで開催された第84回都市対抗野球大会、3年ぶり2回目の出場となった日本製紙石巻(石巻市)は、7月17日の1回戦・信越硬式野球クラブ(長野市)戦に7対3で勝利し、大会初勝利を挙げた。

 21日に行われた2回戦・JFE西日本(福山市・倉敷市)戦にも4対1で勝利し、ベスト8進出。続く準々決勝では前回大会準VのJR東日本(東京都)の前に0対4で敗れたが、2011年の東日本大震災発生後、部の存続すら危ぶまれたチームが、社会人野球の聖地で復興のシンボルとして躍動してみせた。「選手たちはさまざまな困難を乗り越えてここまでやって来た。たくさんの方々が東京ドームまで応援に来てくださってありがたい。最高でした」。木村泰雄監督(立大)は、3年ぶりに出場した大舞台を、感謝の気持ちを込めてこう振り返った。

▲大会初勝利を手にし、8強入りを果たした日本製紙石巻ナイン。東京ドームへ駆けつけた地元ファンの前で、雄姿を見せた[写真=菅原淳]



 前回出場した3年前の大会には、東北第1代表として出場した。しかし、震災で石巻工場に津波が押し寄せ、各地区の第1代表の証である「青獅子旗」は流された。「震災直後は、もう野球を続けられないんじゃないかと思った」(木村監督)と、野球部は活動を休止し、スコップを手に泥をかき、がれきの撤去作業を行った。11年5月に野球部は活動を再開。まだまだ問題は山積する中、「とにかく動き出そうと」(木村監督)とスタートを切った。その後、「青獅子旗」はがれきの中から発見。現在は野球殿堂博物館に展示されており、今大会前には、ナイン全員で訪れた。投手陣最年長で、昨年からコーチも兼任する相沢晋(石巻専大)は「自分たちが石巻を引っ張るつもりでプレーしようと思った」と、今大会では2試合に先発し、2回戦では6回を無失点と好投。「第2の故郷です」と話す石巻のため、必死に腕を振った。

▲3試合中2試合に先発した日本製紙石巻・相沢。投手兼任コーチとして投手陣をけん引した[写真=菅原淳]



 3試合で計2万人近い応援が地元から駆けつけ、2つの勝利をつかんだ。「これで終わりじゃなく、これを始まりに」(木村監督)。快進撃を見せた日本製紙石巻ナインは、これからも地元へ勇気と希望を届ける。(※都市対抗の決勝戦詳報は次号に掲載予定です)
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