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第45回 開催困難になったアジアシリーズ――日本がリーダーシップを発揮して大会維持を!

 

 台湾の台北市内で予定されていた今秋のアジアシリーズの開催が、見送られる公算が大きくなってきた。2020年東京五輪での野球とソフトボールの復帰を目指す世界野球ソフトボール連盟(WBSC)が、今回から公認大会として指定。12月のモナコで行われる国際オリンピック委員会(IOC)の臨時総会を前に競技復帰をアピールする狙いがあったが、計画倒れになろうとしている。

▲昨年は楽天がアジアシリーズを戦った。野球を世界に普及させるためにも、同大会を存続させたい[写真=高原由佳]



 大会内容は、開催地の台湾と日本野球機構(NPB)が運営にかかわる共催という形で、日本をはじめ、台湾、オーストラリア、欧州の各国・地域のプロ野球チャンピオンチームが出場することで6月に合意していた。しかし、関係者によると、台湾球界内部の事情が絡み、方針転換せざるを得なくなった模様だという。新たに台湾に代わる開催地を探して準備するなどの時間的な余裕がないため、大会の開催自体が厳しくなった。

 シーズン終了直後のタイトな時期で、選手に負担を強いることや、莫大な運営資金が必要なことなどから、アジアシリーズはその意義が問われてきた。「われわれの目標は、ペナントレースを勝ち抜き、最終的に日本シリーズで優勝すること。アジアシリーズには興味がない」と、明言している監督もいる。韓国は9月に仁川で行うアジア大会などを理由に、早々と今年のアジアシリーズの自国での開催拒否と参加へ難色を示す姿勢を打ち出していた。「アジアでNo.1の野球チームを決める」と掲げた大会は、関係者にあまり歓迎されないイベントとなっているのが現実だ。

 五輪の競技復帰問題もあり、世界的な普及という観点から、野球界にとって由々しき事態だと言えよう。アマの統括団体であるWBSCが公認したように、アジアシリーズは、プロ・アマ両球界の協調のシンボルという意味合いもあった。05年に創設された当大会は、オーストラリアや欧州にも門戸を広げている。今や“アジア”の枠にとどまらず、クラブチーム選手権としてワールドワイドに発展する可能性を秘めていただけに、水を差された形だ。

 現在、来秋の開催を目指して開催地の台湾との共催を関係者が模索している国・地域別対抗戦「プレミア12」同様、野球の国際大会で日本の果たす役割は大きい。メジャー・リーグを有するアメリカ球界に負けず劣らず、イベントを成功させるノウハウの蓄積は十分にあるはずだ。日本代表「侍ジャパン」を中心とした事業を打ち出しているNPBだが、単に自己の収益や、資金提供にとどまるかかわりに終わるのなら、野球先進国として寂しい。野球普及を促進するための確固たるリーダーシップを発揮してほしい。

 アジアシリーズを維持するためには、まずは大会自体がしっかりとした資金基盤を構築すべきだ。一つの国や地域に一方的な負担を強いる現在の運営方法では、破綻が見えている。参加する各国・地域のプロ野球組織が知恵を出し合い、共通のスポンサー集めや、供出金の捻出方法などを話し合うことも必要だろう。プロだけではなく、アマも巻き込んだアジアの統括組織体を立ち上げ、さまざまなイベントを“骨太”なものにするというやり方もある。

 やっと育ち始めた国際大会を枯らしてはならない。特定の国・地域内の興行という発想から脱皮することが、大会のステータスを上げ、本当の意味での普及につながる。
日本球界の未来を考える

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週刊ベースボール編集部による日本球界への提言コラム。

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