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2015年 大記録に挑戦する男たち

 

ペナントレースは選手たちの記録への挑戦の場でもあるが、今年も多くの選手が目標とする記録を目指している。まずはプロ野球史上2人目の3000試合出場に迫りつつある、中日谷繁元信監督兼任選手に注目しよう。捕手というハードなポジションを守りながら、まだ野村克也しか実現していない記録更新を目前にしている。

あまりに偉大な先人たちの残した足跡


 89年にドラフト1位で江の川高から大洋入りした谷繁元信は、オープン戦で一軍に帯同する英才教育を受けていた。3月4日の巨人とのオープン戦(下関)では、代打で8回に登場すると左越えにプロ入り“初本塁打”だ。

 オープン戦2打席目の本塁打に、観戦していた元本塁打王の田淵幸一氏は「パワーもあるけど、体を開かずにとらえて運ぶうまさを持っている。上手に育てたら大型長距離打者になる」と絶賛していた。

 開幕戦2試合目の4月11日の広島戦に代打でデビューし、見事に左前打。ただし、当時の大洋は8年先輩の市川和正捕手が頭角を現していたので、谷繁が初めて先発メンバーに起用されたのは開幕から28試合目の5月18日のヤクルト戦であった。

 90年になると秋元宏作が入団して正捕手争いはさらに活発化。谷繁がチーム随一の出場数を記録するのは93年である。94年には初めて規定打席に達した。95年は規定打席には届かなかったが、96年からは7年連続の規定打席に到達する。01年をもって横浜を退団してFAで中日に移る。

 チームは変わっても、04年からも4年連続の規定打席到達。規定打席数は年間試合数の3.1倍だから、全試合に出ても途中で代えられてばかりいては届かない恐れがある。06年のセ・リーグには27人の捕手が出場していたが、規定打席に届いていたのはわずか3人である。

 12年を最後に規定打席に届くことはなくなったが、13年でも144試合のうち130試合にマスクをかぶっていた。監督兼任となった14年は捕手としての出場は87試合と少なくなった。同年現在で2991試合、捕手としては2937試合である。

監督をこなしながら、選手としても3000試合出場を目指す中日の谷繁元信監督兼任選手[左]。達成されれば史上2人目の大記録となる



 80年を最後に野村克也が現役を引退したとき、捕手としての足跡はあまりに偉大で、追いつく選手は見当たらないと言うのが正直な話であった。総出場数3017は2位の王貞治を186試合もリードしており、2人はこの80年を最後に現役を退く。2人を追いかけている張本勲も81年に2752試合で引退。野村の3017試合と捕手としての2921試合は、不滅の記録として残るかと思われた。

 しかし、89年入団の谷繁は着々と記録を伸ばし、14年現在で2991試合であり、捕手としても2937試合だ。野村の3017試合にあと26試合であり、捕手としての2921試合はすでに昨年更新している。



 最多出場記録は更新されるが、ほかの通算記録で今シーズン更新の可能性があるものはない。前人の記録があまりに偉大で、現役選手はとても追いつけないのである。

 例えば張本の3085安打にもっとも近いのでも、中日の小笠原道大の2105安打でその差は980安打。小笠原の順位は27位で、張本との間にはすでに引退している選手が26人もいる。

 本塁打にしても王の868本に一番近いのは小笠原の378本で、その差は490本。打点も王で2170。松中信彦(ソフトバンク)は1167で1003差。現役選手が更新できる通算記録は見当たらない。

 その中で記録更新の可能性があるのは清原和博が持つ死球と三振の記録。死球は井口資仁(ロッテ)が54と迫り、三振は谷繁が126と迫っている。

 投手を見ても同様である。更新可能なのは投手交代が頻繁になったことで登板数である。74年に制定されたセーブの記録は現役投手の独壇場で、岩瀬仁紀(中日)が通算1位であり、登板数も949試合の米田哲也に岩瀬があと60と迫っている。

 しかし、米田には先発が626試合もあり、262試合には完投している。一方、岩瀬は889試合に登板しているが、1試合を除いては救援で888試合。岩瀬の先発はプロ入り2年目の00年10月8日の広島戦。なんと岩瀬は7回までに100球を投げて勝利投手になっている。

 継投策とともに、近年増えている登板数を除くと、現役投手が挑戦できる通算記録はない。完投1位は金田正一の365だが、現役1位は通算90位である山本昌(中日)の79だ。その山本も93年には10完投、94年には14完投していたが、09年からの最近5年間の完投は10年9月4日の巨人戦1試合。今年8月11日には50歳になる年齢からして難しいだろう。

 400勝の金田正一に最も近い現役投手はやはり山本昌。次が182勝の西口文也(西武)。西口に次ぐのは166勝の三浦大輔(DeNA)であり、杉内俊哉(巨人)の136勝、石川雅規(ヤクルト)の131勝、117勝の川上憲伸(中日)、内海哲也(巨人)の115勝だ。

 先人たちの記録があまりに偉大なので、打者も投手も通算記録の更新など望めないのが現状である。




衰えぬ野球への情熱
奮闘するベテランたち


 球史に刻まれた大記録の更新は夢のまた夢であるだけに、そのほかの記録にスポットを当ててみたい・・・

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