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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

15歳がJ1デビュー!サッカー界から学ぶべきこと

 

高校生が野球を続けるには原則的に日本高野連傘下で3年間、甲子園を目指すしかない。ただ、新たな“育成法”を考える時期に来ているのかもしれない



 まだあどけない表情が残る15歳が、大人と同じピッチに立った。FC東京・久保建英が5月3日、札幌戦(味スタ)でJ1公式戦デビューを飾った。すでにU-20(20歳以下)ワールドカップ韓国大会の日本代表にも“飛び級”で選出されており、「天才ストライカー」に俄然、注目が集まっている。

 久保は6月で16歳。これはサッカー界の話題であるが、野球界に置き換えると、高校1年生がプロ野球でプレーする――。考えられないシーンである。

 このユース世代(18歳以下)は、サッカー界においては高校の部活、Jリーグの下部組織と2つの選択肢がある。一方、野球界は原則的に一つの道しかない。

 春、夏の甲子園を頂点とした、日本高野連傘下で3年間、青春の情熱のすべてを捧げる。今春でセンバツは89回大会、夏の選手権は99回大会と、長い歴史の積み重ねが、不動の高校野球人気を支えている。

 野球界における「文化」であり、この流れを覆すことはできない。日本学生野球憲章では「学校教育の一貫」とあり、一つずつ段階を経ていくのがスタンダード。対照的に、久保はスペインの名門・FCバルセロナの下部組織で実力を磨き、空前の出世を実現させた。

 もちろん、金銭的な負担は生じるが、中学生が海を渡り、本場・アメリカでベースボールを勉強する。とはいえ、サッカーのような理想的なアカデミーが存在しているかと言えば、現実的な話とは言えないようだ。

 サッカーは「強化」という大前提で、Jリーグも若い世代に門戸を開いているが、そこには「ワールドカップを目指す」という統一見解がある。野球ならばWBCが、世界最高峰の大会として位置づけられている。

 侍ジャパンは今回を含め、2大会連続で準決勝敗退。一部では「世界との差が開いている」という厳しい意見も聞かれる。

 次世代を見据えれば、ユース世代以下の「強化」は必要不可欠。元プロの高校生指導の規制は大きく緩和されてきているが、依然として、現役選手とは高い壁が存在する。だが、このまま「手つかず」というわけにもいかないだろう。競技人口が減少しているという、切実な問題も抱える。「世界一奪還」を目指す上でも、国内における新たな育成システムの確立が急務と言える。

 サッカーから学ぶべきものは、たくさんある。15歳のストライカー・久保の台頭から考えさせられた。球児の夢舞台・甲子園――。変えてはいけない「文化」は当然ある。ただ、柔軟な発想に転換する時代にもきていると思う。

文=岡本朋祐 写真=BBM

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