いよいよ99回目の夏の甲子園が始まった。『週刊ベースボール』では戦後の夏の甲子園大会に限定し、歴代の名勝負を大会期間中に1日1試合ずつ紹介していく。 史上2人目の大記録で頂点へ
39年の嶋清一(海草中、現向陽中)以来、史上2人目の全5試合連続完封を成し遂げた福島
<1948年8月20日>
第30回大会=決勝 小倉(福岡)1−0桐蔭(紀和・和歌山) 最初は一気に時代をさかのぼる。学制改革により中等学校優勝大会が現在の高校野球選手権大会となり、詩を全国から公募して制定された新大会歌「栄冠は君に輝く」(加藤
大輔作詞、古関裕而作曲)が開花式で流れた昭和23年、1948年夏だ。終戦から、まだ3年。日本各地に戦火の傷跡が色濃く残っていた。
決勝は、前年夏に岐阜商を1時間12分の試合で破り、全国制覇を果たし、夏連覇を狙う小倉と旧制・和歌山中時代から通算18回目の出場となる古豪・桐蔭が、緊迫した投手戦を繰り広げた。
小倉のエース・福島一雄は、戦後復活した46年夏の大会から春夏連続5度目の全国大会のマウンド。伸びのある速球を軸にしながらも、変化球、また上手、横手と投げ分ける投球術を誇った右腕だ。対して桐蔭は、荒れ球気味ながら剛球を武器とした2年生左腕の
西村修がエース。福島はここまで4戦、西村は準々決勝、準決勝を連続完封して勝ち上がった。
立ち上がりから両投手が持ち味を発揮し、がっぷり四つの投手戦となり、スコアボードに「0」が並んでいく。
明暗を分けたのは、6回裏だった。小倉は四球、犠打野選で無死一、二塁とチャンスをつかむ。一死後、四球で満塁とし、ここで小倉はスクイズ策をとるも投手フライで二死。万事休すと思われた。続く福田慶久も1ボール2ストライクに追い込まれるが、西村の投じたカーブが福田のユニフォームの左袖をわずかにかすり、死球押し出しでノーヒットながら1点。これが決勝点となった。3安打、4四死球に小倉打線を抑えた西村にとっては、悔やんでも悔やみきれぬ1球となった。
一方、小倉のエース、福島は被安打4、四死球0と最後まで危なげなく、無失点で抑え、史上2人目の全5試合完封を成し遂げ、チームを優勝に導いた。
写真=BBM