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【高校野球】「紅陵復活」を誓う熱きリーダー

 

拓大紅陵の主将・北野は「紅陵復活」を遂げるため同校へ進学した熱いリーダーだ


 関東大会出場をかけた一戦は、最後は気持ちの勝負となった。9月30日、千葉県大会準決勝。3時間36分の激戦の末、拓大紅陵が木更津総合にサヨナラ勝ちを収めた。シーソーゲームは7対7のまま9回を終え延長へ。12回表の相手攻撃を一塁ベンチから見た拓大紅陵・澤村史郎監督は“勝機”を察した。

「二死から一番打者が安打で出塁してスチールでくるかな? と思ったら(次打者が)初球を打ってきて(投ゴロ)。焦っているのかな、と。円陣では『周りのポジショニングを見て攻めていこう!』と言ったんです」

 木更津総合は今夏、2年連続で激戦区・千葉を制し、拓大紅陵にとっては同じ木更津地区の強力なライバルである。

「気持ちだけは、引いてはダメ!!」

 12回裏、指揮官のゲキを受け、指示を具現化したのが主将だった。九番・北野将也(2年)が絶妙な捕手前へのセーフティーバントで出塁。続く犠打の後、二番・小林快志(2年)の左中間二塁打で熱戦にピリオドを打った。

「バントはサイン? いいえ、自分の判断です。キャプテンらしく視野が広かった。あれが大きかった」(澤村監督)

 8対7。木更津総合は3投手による継投だったのに対し、拓大紅陵エース・安藤太雅(2年)は12回、179球を一人で投げ切った。最速134キロと球威で押すタイプではなく、スリークォーターからコーナーに丁寧に集め、カーブ、スライダー、チェンジアップ、ツーシームを巧みに操った。序盤から味方の失策に足を引っ張られる場面もあったが、8回以降は5イニング無失点と集中力を切らすことはなかった。

 14年ぶり9回目の関東大会出場。「ちょっとは『紅陵復活』になったかな?」と安堵の表情を見せたのは主将・北野である。拓大紅陵は小枝守元監督(侍ジャパンU-18代表監督)が率いた1992年夏に準優勝を遂げるなど、春夏通じて甲子園9回出場の強豪校。しかし、2004年春のセンバツ以来、全国舞台から遠ざかっている。

 今夏の県大会前には不祥事が発覚(日本高野連の審議委員会で8月31日に厳重注意処分)。同4回戦敗退後、新チームでは「自分たちの代は頑張ろうと誓い合ってきた」と、準決勝でサヨナラ打を放った小林は結束力を持って取り組んできたことを強調。今秋は地区予選の初戦(2回戦)で東海大市原望洋に4対5で敗れたが、敗者復活戦を経て県大会進出。準々決勝では東海大市原望洋に雪辱し、近年、最も安定感がある木更津総合を準決勝で撃破した。

「ご迷惑をかけている。それを糧として、感謝を持って戦っている」(澤村監督)

「低迷していたので」と、自らの手で「紅陵復活」を遂げるため、同校への進学を決めたという主将・北野は当然、まだ満足していない。エース・安藤は「センバツに出場するつもりで、関東大会でも強豪を倒して優勝したい!!」と、チームリーダーの思いを代弁。10月21日に神奈川で開幕する関東大会で、アイボリーホワイトにエンジの「KORYO」のユニフォームをアピールしていく。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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