2018年に創刊60周年を迎える『週刊ベースボール』。おかげ様で、すでに通算3400号を超えている。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。 座談会『風雲巻き起こす第2のエース』
今回は『1958年6月11日号』。創刊第9号で定価30円。相変わらずカラーページはないが、1つ大きな変革があった。つやのある紙を使ったグラビアページが巻頭2ページ、巻末2ページにできている。増ページでも定価が変わらないのは、部数好調の証拠だろう。
頭グラビアは5月21日、
巨人─
中日戦(後楽園)の特集。延長11回5対5から巨人・
広岡達朗がサヨナラ弾で決めた試合だ。巻末は国鉄の
金田正一のセ・リーグ新51回1/3の連続無失点記録、そして冒頭の巨人─中日戦での両軍のトラブルを時系列を追って連続写真風に紹介している。
巻頭特集は『人物トピックス〜グラウンドの英雄 野球ブームをつくった5人のスター』だ。それぞれ巨人・
長嶋茂雄を「球界のデラックス」、南海・杉浦忠を「魅惑のアンダースロー」(表紙も)、国鉄・金田正一を「マウンドの王者」、
阪神・
田宮謙次郎を「タイガースの華」、東映・ラドラを「精悍無比の黒豹」と見出しをつけ、紹介している。
長嶋の文中では、あまりの人気で下宿先に朝昼晩と電話が来るので、電話のない下宿に移った逸話などが載っている。開幕直後、打率2割台と低迷した時期もあったが、5月21日現在では打率は.307で4位、ホームランは7本で1位、打点も23で1位となっていた。
次なる特集は、開幕から旋風を起こし、首位に立った国鉄と巨人との三連戦を6ページにわたって細かく描写。その後に『野球ブームの実態調査』ということで観客動員の数字が掲載されている。それによれば、5月19日現在の比較で57年の1試合平均が9775人に対し、58年は1万1706人と増え、さらに5月18日現在での球団別平均入場者は1位の巨人が2万4578人、12位の近鉄は3750人とある。後年、観客数の水増し発表が普通となったが、この当時は、ほぼ実数発表だったようだ。57年も入場者最下位だった近鉄の1試合平均1967人は、なかなかに寂しいものがある。
座談会は『風雲巻き起こす第2のエース』と題し、巨人・
安原達佳、東映・
土橋正幸、国鉄・
村田元一、大洋・
鈴木隆が登場。土橋の本拠地・駒沢球場の猛烈なヤジの話になり、「いちばんカッカしたヤジは」と聞かれ、土橋は「そうですね……ねんがらねんじゅうカッカッしているから(笑)」と答えている。後年、土橋の監督時代、解説者時代の短気な姿を知っている方ならクスリとするところだろう。
12球団週間報告では
広島の「リンゴ娘猛虎を敗走さす」という見出しに魅かれ読んでみると、匿名の女性ファンから「練習でお疲れになる選手のみなさまにリンゴを買ってあげてください」と1000円同封の手紙が時々合宿所に届くらしく、5月7日まで10連敗していた広島が、そのリンゴを食べて奮起し、10日の阪神戦でサヨナラ勝ちをしたという話だった。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM