2018年に創刊60周年を迎える『週刊ベースボール』。おかげ様で、すでに通算3400号を超えている。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。 連載漫画『イレギラーくん』
今回は『1958年8月18日号』。創刊第10号で定価30円。カラーページはない。
巻頭は5月28日、ホームランダービーのトップ8号を放った巨人・
長嶋茂雄、さらにその試合で起こったトラブルシーンを前号に続き、連続写真風で紹介。ベンチの上に押し寄せ、外野の柵を壊し、さらにグラウンドに乱入したりする観客は、ファンではなく、暴徒。これが頻繁にあったのだから恐ろしい時代だ。
全体のつくりとして頭と後ろのグラビアでは最新ニュース、センターグラビアでは企画色のあるものと色分けされている。これはいまもそうなのだが、中のグラビアは締め切りが早く、先に校了(編集部の手を離れ、あとは印刷所という段階)しなければならなかったこともある。
巻頭特集は『勝負強くなった巨人の若手〜首位進出までの苦闘編』。26歳の広岡達朗を若手のリーダー格としてインタビューも交え、紹介(表紙も広岡だ)。ほか22歳の長嶋茂雄、24歳の
藤尾茂、23歳の
土屋正孝などの記事を散りばめ、「フレッシュ巨人」を強調している。広岡が若手活性化の要因として挙げたのが、やはり長嶋の入団。「あのようによく打ち、よく守り、よく走る選手が入団してきたことは刺激されますよ」と語っている。
また、この特集中の囲み記事で『ルールを守ろう〜楽しいプロ野球にするためには』という日本社会党書記長・浅沼稲次郎の寄稿があった。そこには「その営業政策が徹底せる資本主義的であって、各選手は一種の生産資材、商品として取り扱われていることである」など、社会主義的視点の野球論になっている。浅沼は60年、17歳の右翼少年に刺殺された。
ほか『筋金のほしい
中日と大毎〜置き去られた優勝候補の現状』『爆発しない西鉄打線』。さらにセンターグラビアでは通算1000打点を達成した大洋の
青田昇、自らのホームランで16勝目を飾った国鉄・
金田正一など、巨人を前面に出しつつも、多くのチームを万遍なく扱おうとする姿勢が感じられる。
連載漫画『イレギラーくん』(竹中顕作。「ュ」は入っていない)では、どうやら当時「騒音防止運動」が活発になっていたようで、「騒音防止区域」と書いた看板があちこちに置かれていたらしい。それを題材とし、野球をしていて人の家のガラスを割ってしまった少年を怒鳴りにくるオジサンに対し、主人公のイレギラーくんが、その看板を指さすところでオチとなっている。
昭和、それも50年代前半くらいまでは、街中のあちこちで子どもたちが野球をして、人の家のガラス窓を割ったりするのも日常茶飯事だった。さらにいえば、人の子どもでも平気で怒鳴りつける雷オヤジ(死語?)もたくさんいたなあ、とやや感傷的になった。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM