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【MLB】大谷の二刀流を実現させるメジャー球団は必ずある

 

10月4日のオリックス戦(札幌ドーム)で四番・ピッチャーで先発し完封勝利を挙げた大谷。メジャーでも球団によっては同じ状況が実現できるはずだ


 ドジャースの編成トップ、アンドリュー・フリードマン、40歳は資金力の乏しいレイズを創意工夫でヤンキース、レッドソックスと互角に戦うチームに育て上げ、15年からドジャースに移ってきた。 

 現地時間11月7日のこと。二刀流について尋ねた。今、MLBの多くの球団は日本ハム大谷翔平欲しさに、「二刀流容認」などと簡単に言うが、筆者の知る限り、本音は先発投手で使い、打ちたいなら機会を与えてあげても良いという程度である。両方やらせてケガでもされたらたまったものではないという考えだ。

 ドジャースも本音はそうではないのか? そこで「二刀流のリスクをどう考えるのか?」と尋ねてみた。フリードマンは「ただ一つのサイドだけをプレーするより、明らかに難しい。だがチームがクリエイティブにスケジュールやリカバリー期間を工夫すれば、実行可能。われわれが二刀流選手と契約できたら、クリエイティブなチャレンジをとても楽しみにしている」と答えた。

 筆者はその言葉に嘘はないと感じた。なぜなら彼は前例にとらわれない創造的なチームづくりに定評があるからだ。17年のドジャースの先発投手は5回か、それより少ないイニングで交代した試合は76試合。メジャー30球団の中で最も多かった。それでもチーム防御率は3.38でMLB2位だった。

 かつては先発投手が長いイニングを投げることで、ブルペンの負担を減らし、長期的に見てプラスというのが常識だった。しかしながらどんな好投手でも打順の三巡目には疲れているし、打者の目も慣れ、打たれやすくなる。

 そこでためらわずリリーフ投手と交代させた。問題はそうした場合、ブルペンが登板過多で早くつぶれてしまうのだが、ドジャースは新しくできた10日間のDLのルールを巧みに利用。例えば先発投手を10日間DLに入れることで登板を1回だけ飛ばし、その期間、ベンチのブルペン投手の数を増やした。あるいは疲れたブルペン投手をDLに入れフレッシュな投手と交換した。

 今季ドジャースは10日間のDLを38回(うち投手に26回)使用。これもメジャー30球団で最多だった。野手についても運動能力の高いアスリートをそろえ複数のポジションを守らせた。コーディ・ベリンジャーは一塁手で93試合、外野は3つすべてを守って46試合。クリス・テイラーはセンター49試合、レフト48試合、内野は二塁手22試合、遊撃手14試合、三塁手8試合。オースティン・バーンズは捕手55試合と二塁手21試合、ローガン・フォーサイスは二塁手80試合、三塁手42試合といった具合。個々の選手がこれだけいろんなポジションを守れれば、その日の先発投手によってマッチアップで有利な打線が組める。

 16年、ドジャースは左の先発投手にやられ続けたが、17年はその弱点は完全に解消された。大谷がMLBで二刀流をやろうにも、従来の選手起用法から抜け出せない球団では希望どおりに行かないだろう。ドジャースのような創造性があれば可能性は広がる。筆者は、このようなチームはMLB全体で5球団から7球団くらいはあるのではと予想する。

 これからのチーム選び。大谷には消極的二刀流容認球団ではなく、新しい何かを創造したいという気概を持った球団を見つけて欲しいと思うのである。
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