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週刊ベースボール60周年記念企画

【週ベ60周年記念企画26】『特集 引退を決意した? 川上哲治』【1958年10月8日号】

 

2018年に創刊60周年を迎える『週刊ベースボール』。おかげ様で、すでに通算3400号を超えている。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。

藤村富美男が対談中にこぼした恨み節


表紙は巨人広岡達朗


 今回は『1958年10月8日号』。創刊第26号で定価30円。中カラー見開きは『暴れまわる猛虎の五勇士』と題し、巨人の本拠地・後楽園球場の前で並ぶ阪神田宮謙次郎三宅秀史吉田義男西尾慈高小山正明。ペナントを大いに盛り上げた男たちだ。

 巻頭グラビアもその阪神から『合理派監督』の見出しで日系人監督・田中義雄が登場。合理的な「インサイドベースボール」を称賛する文章が載っている。ただし、その後も阪神が続くが、見出しは『苦戦続けるタイガース』。一時は0.5ゲーム差まで迫った首位・巨人と差が少しずつ離れてきた。

 本文巻頭は『特集 引退を決意した? 川上哲治』。表紙文字でもあるが、写真は同じ巨人ながら広岡達朗。おそらく写真への着色があるので、進行的には写真セレクトが文字より早いのだろう。

 打撃の神様・川上の引退について、本人の言葉に加え、各方面からの意見を聞きながら特集しているが、その中で、川上の口グセが2つ紹介されている。1つはこの年になって増えたもので、「老兵は死なずだ。老兵は気持ちの上でまいったらいけない。一度機械が止まったら、歯車がさびるように、休んだらもう二度と出場できなくなるだろう」。

 そして、もう1つ機嫌がいいときの口グセ。この年はすっかり聞けなくなったというが、「若さと美貌を誇るわが川上選手は……」。

 神様にもお茶目なところがあったようだ。

 対談も今回はベテランが登場。『若い者に負けるものか!〜23回戦の代打登場をめぐって』と題し、阪神の藤村富美男、巨人の別所毅彦が語り合っている。ミスタータイガース・藤村も引退がささやかれていた一人だが、次期監督候補と目される川上と違い、取り巻く環境は厳しい。

 この年はほぼ代打起用。実は前年まで兼任監督ながら更迭され、その際、球団フロントは更迭の理由は何も言わず、「非常に君は打ちたそうな顔をしているから、君は一つ代打ピンチ・ヒッター要員としてやってくれ。君が世間態がわるければ、なにか肩書をつける」と言われたという。

 功労者に対し、失礼極まりないとも思うが、対談中に恨み節もあった。抜粋しよう。

「俺が特別にピンチ・ヒッター要員としてチームに活入れたわけでなし、会社がそういうふうにさせたんだから、どうせここまで恥かいたんなら、来年もう1年恥かいてやろうと思って(笑)、どうせ恥かきついでや。それでとことんまでやってなにしたら、もうやめるよ。それはその時期にきてるんやから」

「でも、これはもうしようがない。雇われてるもんはな。われわれは雇われている人間であるということが、頭にこびりついてさ、上のいうことは仕方ないという、まあ私の考えですな。しかし、このままじゃすまさんですよ、私は」

「こっちはもう倒れるまでやる。どないなろうと、もうここまで恥かいてきてるんだから、とことんまで恥かいてやる」

 語りながらどんどん熱くなっていく様子が伝わる。

 では、またあした。

<次回に続く>

写真=BBM
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