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週刊ベースボール60周年記念企画

【週ベ60周年記念企画67】『特集 天皇、大いに野球を語る』【1959年7月22日号】

 

2018年に創刊60周年を迎える『週刊ベースボール』。おかげ様で、すでに通算3400号を超えている。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。

天覧試合に絡み詐欺にあった広岡達朗


表紙は右が西鉄の稲尾和久、左が三原脩監督


 今回は『1959年7月22日号』。定価は30円だ。センターカラーは今回はなし。さらにグラビアで6月25日の天覧試合の記事は見当たらない。『月刊ベースボールマガジン』にはあったのだが、すみ分けだろうか。

 本文巻頭でやっと『特集 天皇大いに野球を語る』と天覧試合の特集だ。巨人長嶋茂雄のサヨナラ弾で劇的に決まった試合だが、ほとんど試合には触れず、(昭和)天皇皇后両陛下の様子を、いつもにように、微に入り細に入り、周辺情報も入れながら構成している。

 試合中の章を抜粋しよう。

 試合中、中沢会長は、両陛下にこう申し上げたという。

「もし、ファウル・ボールがこの席のほうに飛んできましたら、およけになってください。この場所はもっともファウル・ボールのこない場所なのですが、そうかといって安心できません」

 たしかに試合が終わるまでついにファウル・ボールは飛んでこなかった。しかし付近にはときどき飛び込んだ。が、天皇は少しも体を動かそうとしなかった。

 ファウル・ボールだけではない。中沢会長が、ご説明役を仰せつかってから毎日考えた、プロ野球に関する数多くの説明を心もち体を中沢会長に寄せるだけで、顔は必ずグラウンドに向けていた。

 陛下の発言もほほえましいものが多かった。

 長嶋が三振したとき、「あれ、ストライクなの」と聞かれたり、ラインすれすれの打球が飛ぶと、「ファウルかね、いまのは」。

 両陛下で顔を見合わせて、中沢会長に聞かれたのは、長嶋が三振したとき、ハーフスイングだと一瞬不服そうな顔で球審をみつめたときだった。

「なにをいっているんですか」と、まず聞かれたのは皇后さま。「うん」とおっしゃったのが天皇陛下だった。

 なお、巨人・広岡達朗がこの天覧試合に絡み、1万円の詐欺にあったという記事もあった。皇族の清宮さまにサインをプレゼントした広岡に、お返しのプレゼントがあると近づいた小西金蔵という男で、広岡の自宅を訪ねて、それを渡した際、「ちょっと用事があるので1万円を貸してくれ」と言い出し、このときは不審に思った広岡が断ったが、次にまた家に来たとき「持ち合わせがないので」とタクシー代2460円を広岡から借り、さらにいつの間にか夫人のハンドバックから指輪、部屋にあったネクタイピンを持ち去ったというのだ(ちなみに清宮さまからのお返しというのは、偽物)。すぐ逮捕されたが、取り調べでは「自分は野球評論家の小西得郎のおいだ」と言い張っていたという(これもウソ)。

 では、またあした。

<次回に続く>

写真=BBM
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