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追悼・星野仙一

追悼企画03/星野仙一、野球に恋した男「中日指名後、週ベに掲載されたインタビュー」

 

 星野仙一さんは、いつも言っていた。「俺はベースボールの取材は断らん」。実際、ほとんど断られたことはない。恥ずかしい話だが、テレビ局などに比べれば、ウチのギャラなど雀の涙……。おそらく、球界にとっての専門誌の重要さを評価してくれていたのだと思う。そういった俯瞰(ふかん)した見方ができる方だった。
 いま編集部では、1月26日発売予定で星野さんの追悼号を制作している。その中で、たくさんの資料を見て、たくさんの方から話を聞いた。それがあまりに膨大なので、これから毎日になるか、数日に1回になるか分からないが、追悼号には入りきらなかった話を当時の『週べ』の記事の再録も交えながら紹介していきたい。(以下は敬称略)

「野球を一生の仕事にしたいです」


中日入団前、明大の寮近くをランニングする星野


 1968年12月16日号、星野はグラビアページと本文ページにダブルで出ている。本文は「それが知りたい」というコーナーで、選手に30の質問をぶつけ、答えてもらうというものだ。タイトルは「ドラゴンズ(竜)が尾をふる即戦力の旗印」とあった。

 このときはまだ、中日入団を発表していない。今回はそのいくつかを抜粋する。

 気負いもある。星野らしい言葉、らしくない言葉がある。それも当たり前のことだろう。男・星野仙一も、まだ大学4年である。

Q ドラフト1位に指名された心境は。

A その日までは、どこに当たるか楽しみだったです。でも当日は、巨人のほうが中日より順位が上だったでしょう(指名順。巨人が8位、中日が10位)。だから、もしかしたら巨人が指名してくるかなと思ったんです。ところが巨人は島野(修。武相高)で通過しちゃったとの知らせが入ったんです。もうイライラしたですね。巨人に指名されるとばかり思っていましたから。

Q 意中の球団は。

A やはり巨人だったですね。でも小さいころはずーっと阪神が好きだったんですよ。ただ野球を職業の一つとして考えた場合、巨人がいいということです。

Q プロ野球への関心度は。

A 興味は持っていましたけれど、試合そのものは全然見たことがありません。テレビで見るのがせいぜいです。いつも思うんですが、巨人が勝ってばかりいるとつまらないですね。だから負けろ、負けろと応援しているんです。巨人というチームは、自分の職業として考えるのはいいけど、第三者の野次馬気分で見るときは思わず負けちゃえといった気持になる変なチームですね。

Q ドラフト制度をどう思う?

A 僕らにとっては一生の問題ですから、クジ1本で決められちゃうというのは不満です。だから僕はドラフトが終わってからの新聞の座談会で「組合を作って対決しよう」と発言したんですが、それが本当の気持ちですね。

Q 得意の決め球は。

A 勝負球はやはり真っすぐのスピードボールですね。カウント稼ぎは大きく曲がるカーブをほうってました。人からもよく言われるんですが、僕の球は割合重いほうらしいんです。スピードだけをプロの投手と比較されても負けない自信があります。

Q 嫌いなバッターは。

A 小さくコツコツ当ててくるしぶとい選手は嫌なもんですね。田淵(幸一)とか富田(勝)、山本(浩司。のち浩二)の法政トリオとか一流の大型打者にはやられてないんです。ただ、下位の名前もよく知らないような連中に打たれているので、人から「お前はクリーンアップが終わると、ほっとしすぎてるんじゃないか」といわれるんですが、多少はあるかも知れないですけど、自分では意識ないです。

Q 目標とする人と尊敬する人物は。

A 目標とする人は小さいときから阪神ファンだったから村山(実)さんですね。若いころの村山さんのあのダイナミックなフォームは本当にひかれました。尊敬する人は、やはりオヤジさん(明大・島岡吉郎監督)です。何ごとにも情熱を傾けていく姿勢は大したものだと思っています。それに義理人情を重んじる人ですね。僕も今年キャプテンをやってみて、それをつくづく感じましたね。それまではいろいろと誤解していた面もありました。

Q 自分の性格分析。

A 一本気な性格でしょうね。よく分からないですけれど、自分の性格は好きです。気の短いほうだけど、まちがったことをやったり、見逃したりするのが嫌いなんです。

Q モットーは。

A 大きな不可能な夢はみないということです。「夢を夢としてみない」ということなんです。

Q 将来の目標は。

A 野球を一生の仕事にしたいです。それと二十勝投手になれなくとも、15勝級のピッチャーでいいから、細く長く寿命のある頼られる投手になりたい。

 かなったもの、かなわなかったものがある。

<次回へ続く>

写真=BBM
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