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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

ベースボールアナリストとして「現場主義」を貫いた中村和久氏

 

中村和久氏(元巨人チーフスカウト)が1月17日に死去。2010年から昨年10月まで8シーズン、小誌連載でドラフト候補選手を分かりやすく解説していただいた


 あまりに思いがけない知らせに、言葉が出ない。ベースボールアナリスト・中村和久氏が1月17日、東京都内の病院で死去した。70歳だった。

 1947年生まれ、三重県出身。高田高、名古屋商科大を経て、70年に社会人野球・リッカーでは都市対抗2度出場した。74年限りで現役引退後はマネジャー、コーチ、部長代理を経て82年に監督就任。元阪神中西清起投手らを育てたが、84年にチームが活動停止。

 翌85年から巨人スカウトへ転じ、87年から9年間は近畿・中国地区を担当、2006年から4年間は球団代表直属チーフスカウトを歴任した。岡島秀樹元木大介橋本清高橋尚成阿部慎之助野間口貴彦亀井善行山口鉄也金刃憲人長野久義らの入団に尽力している。スカウト歴は25年に及ぶ。

 09年12月限りで巨人を退団し、その後はベースボールアナリストとして活動。小誌連載「Professional Report 〜元巨人チーフスカウト発〜」のほか、ドラフト関連の別冊、増刊でも独自の視点で分かりやすい解説を展開していただいた。

 週刊ベースボールでの連載は10年から17年10月まで、計8シーズン。中村氏は神宮での大学野球のほか、社会人野球、春、夏の甲子園大会など、各種試合をネット裏記者席で視察。まさしくその目で、ドラフト候補選手を見る「現場主義」を貫いた。

 だが、昨夏の甲子園は体調面の不安から「欠場」していた。回復を待ち、18年へ向けた準備を進めようとしていた矢先、中村氏から「今年で終わらせていただきたい」との電話が入った。「迷惑がかかるかもしれない……」。週刊誌の連載で穴を開けてはならない、と……。何とか継続したい旨を伝えたが、決意は固かった。まさか、このような日が来るとは……早すぎる。

 とはいえ、「何か単発企画の依頼があれば、全力を尽くします」と意欲を失うことはなかった。最後の仕事は、2017年10月26日に行われたドラフト会議の決算号における「総括」だった。11月には入院したとのことで、責任感の強さを感じずにはいられなかった。

「準備の人」だった。“プロ”として仕事を受ける以上、常に高いクオリティーを追求する。取材が終わるたびに「これで、大丈夫でしたか?」と謙虚な姿勢を忘れない。ノートには丁寧な文字が書かれ、几帳面さも出ていた。こちらから依頼したテーマの意図をしっかりとくんでくれ、エピソードにも事欠くことはなかった。そうした真摯な姿勢こそが、スカウト業においても、各アマチュアの現場から全幅の信頼を得ていた証しだろう。

 中村氏の豊富なキャリアを通じ、これまで雑誌であまり触れることができなかった分野に、踏み込むことができた。元プロ目線からの評価、スカウトの動き、球団の補強ポイントなど、さまざまな角度から「ドラフト」を勉強させていただいた。感謝の言葉しかない。合掌。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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