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2018キャンプ取材現場発

【ヤクルト】「鬼」ではなく「仏」では?【キャンプ取材現場発】

 

【ヤクルト】「鬼」ではなく「仏」では?


新人の宮本丈に助言する石井琢打撃コーチ


「ああ、やっと座れた……」。居残り特打が終わったのは日も暮れかけた夕方5時前だった。石井琢朗打撃コーチは三塁ベンチに腰を下ろすなり、苦笑い交じりにこうつぶやいた。

 とにかく精力的だ。とにかくじっとしている時間はない。選手にトスを上げ、打撃フォームについてアドバイスを送り、コミュニケーションは途絶えることがない。そして仕上げは藤井亮太西浦直亨奥村展征による居残り特打の打撃投手。その横では宮本慎也ヘッドコーチも投げていた。

 さらにファウルグラウンドに目をやると、河田雄祐外野守備走塁コーチが新人の塩見泰隆を相手にノックを行っている。このマンツーマンでのノック、キャッチャー役を置いていない。左打ちの河田コーチは打球を放つとすぐさまバットを放り出し、左手にグラブをはめて返球を受ける。打ってしゃがんで、また立ち上がる。見た目以上の重労働だろう。これには理由があった。河田コーチは塩見が投げる球の「質」を見極めていたのだ。1球ごとに「今のはいい!」。また、球がそれると両手を広げて「この範囲だ!」と叫ぶ。守備と送球、両方の精度を確かめていた。

 暗くまで選手たちがグラウンドに残り、練習を続けている。その傍らには必ずコーチがいるのだ。石井琢コーチは「今季、結果を残すことも大事だけど、5年、10年後に若い選手たちがこのチームを背負って戦えるように」と言う。そのために今の厳しい練習が必要なのだと。広島で結果を残したが、選手たちを同じ色に染めるわけではない。その理由は「ヤクルトには、ヤクルトのカラーがあるので」。宮本ヘッド、石井琢、河田両コーチは「鬼」と言われるが、実はそうではない。石井琢コーチの言葉を聞いていたら、「仏」の慈悲すら感じるのだから。今季のヤクルト、「変化」の予感が漂っている。

文=富田 庸 写真=内田孝治
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