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センバツ現場発

センバツ現場発/智弁和歌山高に敗退も応援では負けなかった東海大相模高

 

第90回記念選抜高校野球大会が3月23日、阪神甲子園球場で開幕した。球児による13日間(準々決勝翌日の休養日1日を含む)の熱戦が繰り広げられるが、現場でしか分からない「センバツリポート」をお届けしていく。

数では負けたが、気持ちは互角以上


東海大相模高をアルプス席でバックアップする応援委員会。部長の宮城さん(左)とチアリーダー部長の大貫さん(右)はともに、主将・小松と同じ2年5組だった


 東海大相模高・門馬敬治監督は2000年春、決勝で智弁和歌山高を下し、同校センバツ初優勝へ導いている。18年前の記憶で、脳裏に残っているのが、相手の「応援」だと言う。決勝進出をかけた一戦。人数では三塁側の地元近畿勢・智弁和歌山高に及ばなかったが、“圧”と“熱”は一塁側・東海大相模高アルプスも決して負けてはいなかった。

 東海大相模高には「野球応援専属」の応援委員会がある。応援団6人、チアリーダー28人で、週3回(月、水、金)の練習に励んでいる。

 応援団は全員が女子部員。全国制覇を遂げた2015年夏は男子部員1人(当時部長)がいたが、以降、3学年は女子部員のみの構成となっている。部長の宮城涼香(3年)さんは中学3年時、15年夏の甲子園優勝を見て、東海大相模高にあこがれた。

「ここで応援したいと思いました」

 入学後は発声練習に最も時間を割いた。

「声を低く出すのが大変なんです。中学時代の友達に会うと『声、変わったね!!』って言われます」

 アルプスでは「太鼓」「型(応援リーダー)」「プラカード持ち」「プラカード補佐」を担当。太鼓と型を兼務するのは、部長の宮城さんだけと、アルプス応援の中枢を担っている。太鼓のたたき過ぎで、両手はテーピングでグルグル巻きとなっており「痛いですが、試合が始まれば気になりません。スタンドを盛り上げ、選手の力になりたい」と、力の限り、声を張り上げた。

 2年時は主将・小松勇輝(3年)とクラスメートだった。

「笑いを取ってくれます!!」

 そして、小松、宮城部長と同じクラスなのがチアリーダー部長で、2年5組の学級委員でもある大貫杏樹さん(3年)だ。

「小松君はとてもやさしいです!!」

 大貫さんも2015年夏の全国制覇をテレビ観戦し「笑顔で応援しているチアが素晴らしかった」と、東海大相模高を志望した。

 大沢中時代はソフトボール部に在籍。ポジションはキャッチャーという視野の広さが認められ、2年秋からチアを束ねる立場となった。チアリーダーは華やかな世界に映るが、常に見られる立場だからこそ、規律が厳しいという。

「相模を代表して応援させていただいている。礼儀は心掛けているつもりです」

 アルプス席での取材時もまずは深々と一礼し、背筋をピンと伸ばして受け答え。全校生徒の“鑑”となるべく日々、緊張感のある学校生活を送っている。

 試合は延長10回の末、10対12で惜敗した。球場全体が智弁和歌山高のムード一色となるシーンがある中でも、東海大相模高も必死に応戦。数では負けていたが、気持ちは互角以上だった。

 2人は言った。

「甲子園に必ず、戻ってきたい」

 目下の悩みは、応援団が3年生6人のみという状況だ。新2年生は不在のため、4月入学の新入生を勧誘しなければ、歴史が途絶えてしまう。応援委員会顧問の柴清先生は「もちろん、男子も大歓迎です!! 今回の甲子園で応援する楽しさ、やりがいを感じてくれたらうれしいです」と語る。

 応援委員会は野球部と同じ道を歩むため、3年生にとっては夏が最後の活動になる。つまり、野球部が敗退すれば、応援委員会も引退となる。2人は口をそろえて「甲子園で終わりたい」と言うのも、野球部員との共通の思い。

 智弁和歌山高に敗退後も、一塁アルプスの応援委員会は毅然とした態度で、自校の頑張りを労うと同時に、相手校の健闘を称えていた。負けても爽やかな去り際だった。東海大相模高はこれからも、グラウンドとスタンドが一体となって戦っていく。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎
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