週刊ベースボールONLINE

週刊ベースボール60周年記念企画

【週ベ60周年記念企画177】大毎・永田雅一社長の告訴沙汰【1961年8月21日号】

 

今年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。

『ジャイアンツの罰金物語』


表紙は巨人長嶋茂雄


 今回は『1961年8月21日号』。定価は30円だ。本文巻頭は『真相はこうだ〜大毎・大洋の告訴沙汰』。大洋は選手の女性関係のゴシップなので触れない。大毎については週刊現代の『クーデター寸前の大毎オリオンズ』の記事について大毎オーナー、大映社長の永田雅一が信用き損と業務妨害で起訴したという話だ。記事内容は不振が続くチーム内がクーデター寸前で、新球場建設のための資金集めでは詐欺行為に近いことが行われていたというものだったらしい。怒りの永田は週べの記者を呼び寄せ「真相はこうだ」と長々熱弁をふるった。

 とても全文は紹介できないので、結びの一文のみ。

「世の中は努力する人に風当たりが強くて、いろいろなことを言われるのだ。だから加害者のごとく伝わっているのが実は被害者であり、被害者のごとく言われている者が加害者である。これが日本の現状なんだ」

『ジャイアンツの罰金物語』という特集もあった。首位を走る川上巨人が重い罰金制度を原動力にしている、という話だ。もともと巨人は遅刻やサインの見落としに1000円から1万円程度の罰金はあったというが、相場が一気に上がり、コーチへの反抗したことで5万円を取られた選手もいた。当時の給料ではかなり痛い額だ。

 罰金王は長嶋茂雄。これはすべてサインの見落とし、というか見ていないのだ。ベンチも主力の長嶋から罰金は取りたくない。走者を置いて打席に向かう際、「シゲ、サインだけは見ておけよ」というのだが、長嶋は「オッケー」と返事はいいものの、いざ打席に入ると、完全に抜け落ちてしまうらしい。

 川上哲治監督に直接、罰金制度で選手から不満が出ていないかと聞いている個所もあった。答えはこうだ。

「たとえ選手がどういおうと、私の考えに変わりはありません。世間からどれだけ非難を浴びようと、いっこうに平気です。こういうやり方が、少しでも選手個人の力を発揮させ、プロ野球人として守るべきことがきちんと守れるような選手になれるのなら、それで私は満足ですよ。この気持ちを貫いていけば、必ず巨人は強くなります。強くなるまで、私は努力を続けていくつもりです」

 厳しい人だ。

 くだらない感想を。いまのようにパワハラが厳しく糾弾され、ゆとり世代が社会の第一線にいる時代は、当たり前かもしれないが、プロ野球の世界でも殴ったり、怒ったりできなくなっている。
 ただ、ならプロの世界はどうやって選手を引っ張り、勝利を目ざせばいいのか。「指導者の情熱」と答えたいが、それも難しい時代が近づいているようにも思う。ドライでつまらない答えだが、最後は選手をコマと見る冷徹さか、カネになるのかもしれない。

 以下、宣伝。

 週べ60年記念シリーズ『巨人編』『日本ハム編』が好評発売中。第3弾の『阪神編』も鋭意制作中です。

 では、またあした

<次回に続く>

写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング