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【MLB】メジャー・リーガーたちのよりハイパフォーマンスを引き出すMLB球団の新たな取り組みとは?

 

現在のメジャー球団は選手個々に合わせたさまざまなトレーニングなどを行っている。カブスに移籍したダルビッシュもそういう流れの中でキャンプ調整を行ってきた



 ダルビッシュ有投手がキャンプ中「カブスはルールがほとんどないし自由だから、自分のやりたいことに専念できる。自分に合っている」と感謝していた。「初日、来た日からあれをやったほうが良いんじゃないかとか、こうしちゃダメだとか、一切何も言われていない。ストレスゼロでした」。

 キャンプが終わるころ、ジョー・マドン監督にそのことについて聞くと、メジャー・リーガーには5つのレベルがあると説明してくれた。1のレベルは「ここまで来られたことがうれしい」。2は「ここが好きだし、なるべく長くとどまりたい」。3は「自分はメジャー・リーガーである」。4は「可能な限りいっぱいお金を稼ぎたい」。5は「チームが勝つためならなんだってやりたい」である。

 その上で、「3」より上の選手は自分で何をすべきか分かっているプロフェッショナルであり、ルールなど必要ないと付け加えた。ダルビッシュは、キャンプ中、ピッチングフォームの改良に加え、ツーシーム、変化球など球種の微調整に専念できた。

 ご存じのように、キャンプ中のチーム練習の時間は日米で著しく異なる。一日中一緒に練習する日本と違い、メジャーは午前の2時間くらいで終わって、あとは個人任せ。選手はそれぞれに体も違うし、技術面での課題も異なる。だからチームで同じメニューを延々とやるのは時間のムダでしかないし、チーム練習が長過ぎると、体力を使い果たし、自分でやりたいことをする時間も気力も残っていない。

 今、こういった考え方は、さらに次のレベルに進化しようとしている。ブルージェイズは昨年から「ハイパフォーマンス部門」を設置。IMGアカデミー(スポーツの他種目トレーニング施設)にいたアンガス・マグフォード氏の下、43人のスタッフが選手をサポートする。トレーニング、医療、栄養、メンタル、それぞれに専門家がいるのだが、選手それぞれに別々のメニューを作る。

「選手個人、個人で、肉体もメンタルも違う。となると選手がみんな同じウエイトのプログラムをやるのはおかしいし、同じ食べ物を口にするのも間違っている。ブルペンで投げる球数も同じである必要は全くない。全ては目的があってのこと。選手はそれぞれのやり方で才能を一番に生かす方法を見つけねばならない」という。

 そうすることで、より特技に磨きをかけ、個性的な選手になる。マリナーズも今季から「ハイパフォーマンス」担当部長を採用した。ロリーナ・マーチン女史で、昨年まではNBAのレイカーズで働いていた。大学で心理学、運動生理学、空間解析、生物統計学、疫学を学び、アスレチックトレーナー、ストレングスコーチ、栄養士の資格も持つ。

 幅広い専門知識とデータ分析をもとに、世界レベルのアスリートを作り、ピークパフォーマンスを引き出す。大谷翔平が在籍するエンゼルスにも「スポーツサイエンス&パフォーマンス」部長のバーナード・リーさんがいる。二刀流のための独自の調整を認めることで、あの特別なパフォーマンスが現実のものとなったのである。


文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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