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石田雄太の閃球眼

“17年ぶり”の優勝目指す“オリ近”/石田雄太の閃球眼

 

開幕前に優勝を宣言したオリックス・バファローズ。交流戦は連勝スタートも6月10日時点で6勝5敗の6位につける


白いボールのファンタジー。
 
 ご存じ、パ・リーグの連盟歌である。試合前などに流されることが多いこの曲、交流戦が始まるとパの球団の応援団はスタンドで演奏し、ファンが熱唱する。パ・リーグのファンにとっては特別な想いが詰まった、名曲である。

 この曲を聴くと思い出すのが2004年に勃発した球界再編の波だ。近鉄がオリックスに吸収合併され、さらにダイエーがロッテと合併して最終的には1リーグ10球団になるのではないかという危機にパ・リーグは瀕した。パのファンは一致団結してこの危機に立ち向かったが、結局、近鉄を守ることはできず、楽天が新規参入することでかろうじてパ・リーグの灯は保たれた。交流戦は、このときの危機感がもたらした産物なのである。

 だから、交流戦の季節が来ると近鉄バファローズのことを思い出してしまう。日本シリーズで広島巨人ヤクルトと戦ったことがある近鉄は、セの他の球団と真剣勝負をしたことがない。昭和のプロ野球をこよなく愛した身としては“近鉄対阪神”とか“中日対近鉄”とか、そんな文字列を見るだけでワクワクしてくる。交流戦を戦うことなく、オリックスに吸収合併される形で事実上、2004年限りで消滅した近鉄は、今のオリックスの中に生きていると考えるファンもいれば、分配ドラフトで選手を送り出した楽天の中に生きていると思うファンもいるだろう。もちろん、どこにもいないと嘆くファンも少なくない。

 近鉄というのは、じつに破天荒で魅力的なチームだった。この仕事を始めてすぐの1989年、近鉄のサイパンキャンプの取材に行ったときのことだ。今のキャンプはテレビカメラを置く位置が決められていて、決まった場所からしか撮影できない。しかし、当時の近鉄にそんな制約はなかった。常識の範囲内なら、どこからでも選手を撮影できる。アップしているとき、外野の芝生で寝転がってストレッチをしている選手の顔を真上から撮ったこともあった。

 当時のメンバーが思い浮かぶ。阿波野、小野、山崎、村田、加藤哲、吉井、山下、大石、新井、金村、村上、淡口、真喜志、鈴木、羽田、中根、ブライアント……強面でも気の優しい、オトコ前の選手が揃っていた。そもそも近鉄とオリックス(阪急ブレーブス)とでは、チームのカルチャーがまったく違う。同じ関西とはいえ、こてこての近鉄とスマートなオリックスでは粋(すい)とするものが異なっていた。そんなふうにカラーの違うライバル球団が合併するといきなり言われても、お互いのファンにしてみれば受け入れられるものではなかったろう。

 しかも近鉄ファンは球界再編の折、苦渋の決断を迫られた経緯がある。オリックスとの合併に反対し続けながら、それが叶わないとなった途端、2リーグ制と12球団維持を目指した近鉄以外のパ・リーグファンに、近鉄ファンは協力しなければならなかった。近鉄はなくなってもパ・リーグのために頑張った――それが近鉄ファンの矜持だったのではないかと思う。だからこそ、近鉄はバファローズの中に生きていると思いたいのだ。近鉄とオリックスの監督を務め、いずれのチームも優勝に導いた仰木彬さんが生前、こう言っていたことがある。

「近鉄とオリックスは文化が違うとか言われるけど、僕からしたらチームカラーなんてあとからできるものなんちゃうかなと思いますよ。結局、近鉄もオリックスも優勝して初めてそれぞれのカラーが生まれた感じがするからね。そう考えると、“オリ近”も勝つことで初めて馴染むんだろうし、そこでカラーが作られることになるのかな」

 仰木さんならではの言い回しではあるが、その“オリ近”からは近鉄の色がどんどん薄まっている気がする。今年の開幕前、オリックスは「22年ぶりの優勝を目指す」とぶち上げた。1996年、日本一に輝いたあのシーズン以来、ということなのだろう。ただ、近鉄は2001年にリーグ制覇を果たしている。オリックスとしては22年ぶりの優勝なのかもしれないが、バファローズとしては17年ぶりの優勝だ。

 今シーズン、近鉄のユニフォームを復刻させて試合を行っているほどなのだから、オリックスとして、バファローズの歴史も大切にしてほしいと願う。オリックス・バファローズが目指すのは“17年ぶりの優勝”であり、いつの日か、“オリ近”の遺伝子を受け継いだ“大阪バファローズ”の誕生であってほしい。交流戦の空気に包まれ、白いボールのファンタジーを聴くと、ついそんな夢を思い描いてしまう次第――。

文=石田雄太 写真=BBM

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