今年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。

王貞治と長嶋茂雄の関係

　今回は『1963年3月25日号』。定価は40円だ。

　いまならあり得ない話で当時でも物議をかもしたようだが、阪急・西本幸雄新監督が、報道陣らが見守る前で選手にビンタした。

　名古屋で行われた初めてのオープン戦で惨敗した後だった。翌日は、西宮球場での練習だったのだが、新人投手３、４人がブルペンで座って先輩たちの練習を見ていたらしい。
　前年までの阪急ならさほど珍しくなかったが、西本監督は彼らがベンチに戻ってくると、平手で何発も殴った。

　さらに負け試合の後は、必ずミーティングを行い、個々に対して具体的な課題を指摘したという。
「こんなことは昨年まではなかった。精神的な高揚を常に置く監督さんですね」
　と選手には概ね好評、とあったが、ほんとか。

　表紙になった巨人・長嶋茂雄、王貞治の関係が話題になっていた。
　考えてみれば、王が一本足打法で開眼し、本塁打・打点の２冠に輝いた62年に、長嶋が入団以来初めて打率3割を切る大スランプというのも興味深い。

　川上哲治監督は2人についてこう語っている。
「王は昨年ホームラン王になったが、ヒットを打つことでは長嶋が上だった。キャンプで王は不安を一掃したが、長嶋も昨年の迷いから完全に覚めた。これで王─長嶋という強力なコンビができた。海の向こうのＭＭ砲（マリス─マントル）、ＫＣ砲（ケーライン─コラビト）にも負けないくらいの破壊力ができた。王はいままで人気の点では長嶋と肩を並べていたが、今度は実力でもいい勝負だ。楽しみだね」
　あのイニシャル砲がもう少しで出てくるようだ。

　南海のメジャー留学は、阪神がキャンプを張ったデトロイト・タイガースのタイガー・タウンで行われ、メンバーはコーチの蔭山和夫、選手は杉浦忠、新人の林俊宏、通訳がカールトン半田だった。

＜次回に続く＞

写真＝BBM