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【MLB】メモラビリアの信頼性を守るオーセンティケィター

 

試合には必ずオーセンティケィターがおりメモリアルな場面に立ち会うのだが、ロッキーズのクラブハウスマネージャー、マイク・ポンタレリさんは昨年のグレイ投手の初本塁打(写真)のときは池に飛び込み判定に困った、と苦笑いしてエピソードを語った



 現在、MLBの試合には必ずオーセンティケィター(AUTHENTICATOR)が待機している。「本物と保証する人」の意味で、正直で信頼できるというので元警察官や現役警察官が多い。

 2000年まで、市場に出回っているサインボール、使用済みバットなど、MLB関連のメモラビリアは偽物が氾濫していると言われた。FBIの調査では90パーセントが偽物だった。そこで01年から新システム導入。ホログラムを使って完全登録制にした。オーセンティケィターは試合中、球団のスタッフと連絡を取り合い、記念の品を収集し、登録するプロセスを見守る。7月4日の独立記念日の試合など、メモラビリアがたくさん出るゲームは、複数待機するのである。

 具体的にどういった流れなのか。ロッキーズのクラブハウスマネージャー、マイク・ポンタレリさんに聞いた。

「毎日、球団の広報から送られてくるその日のマイルストンリスト(節目の記録リスト)に目を通す。通算200二塁打とか500奪三振とか。試合前に、オーセンティケィターが必ず私のオフィスに来て、打ち合わせをする。試合中は、内線でフィールドクルーやセキュリティのスタッフと連絡を取り合う。その打席前に『この打者は、次が200二塁打だから、ボールの確保に気をつけて』と注意を喚起しておくんだ」

 大変なのは記念のボールがスタンドに飛び込んだとき。「ホームランが出たときは、スタジアムオペレーションのスタッフとの連携。ホームランの落下した場所をビデオで確認し、その側にいるアッシャーに内線で連絡して、ボールを手に入れたファンを即座に見つける。スタンドに飛び込んだボールは拾い上げたファンのもの。どうするかを決めるのは彼らの権利。だから球団スタッフが選手のサイン入りのボールや試合のチケットと交換してくれないかと交渉する。今までの実績で言うと99パーセントは回収できている。多くの場合、快く交渉に応じてくれるからね。希に、ファンがそのままボールを持って球場を去ってしまったり、交渉で合意できなかったりもあるけどね」。

 ロッキーズのクアーズ・フィールドには、そこに飛び込んだらおしまいという魔の海域(?)がある。「去年うちのジョン・グレイ投手がメジャー初本塁打を打った。センター左のスタンドに飛び込んだが、そこで跳ねて、球場名物のセンターの噴水池に入ってしまった。私が取りに行ったんだが、そこは打撃練習で打ち込んだ100個以上のボールが浮かんでいてどのボールか見分けがつかない。噴水池は数週間に一度、ボールをまとめて除去するけど、普段はそのまま。だからこういうことになる」と苦笑いしていた。

 バミューダトライアングルのように魔の海域で消えるのではなく、多過ぎて分からなくなるのである。ちなみにロイヤルズのカウフマン・スタジアムも外野席に大きな滝の流れる池があり、そこもボールだらけの海域。そんなときに、球団スタッフが「おそらくこれだろう」と適当な収集をしてしまわないように、厳格なオーセンティケィターが常に立ち会い、しっかり見守っているのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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