今年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 メガネの青年は本当にボールを捕ったのか?
今回は『1964年7月6日号』。定価は50円だ。
6月17日、後楽園球場の
巨人─
中日戦だった。
5回表二死から中日・マーシャルのバットが弾き返した打球がレフトスタンドに飛んでいく。
これを巨人のレフト・
相羽欣厚がジャンプ。捕球した様子はなかったが、相羽はしばらくスタンドを見ていた。
鈴木線審もホームランのゼスチャーをせず、相羽のいたあたりに走り寄ると、しばらく間が空いた後、なぜかアウトのゼスチャー。これに対し、怒りの形相のマーシャルを先頭に中日の
西沢道夫監督代理以下、中日の選手が鈴木線審のところに集まった。
どうやら相羽が捕球前にお客さんがボールを捕球し、そのままボールを持って逃げてしまったらしい。
鈴木線審がマイクで以下のように説明した。「マーシャル選手の打球は、観客の妨害がなければグラウンド内で当然捕球できたものと判断し、アウトを宣告しました」
しかしこれに対し、中日側は打球はスタンドに届いていたと抗議。
つまり野球規則3.16の付記「野手がフェンス、手すり、ロープから乗り出したり、スタンドの中へ手を差し伸べて捕球するのを妨げられても妨害とは認められない」にあたるはずと主張した。
西沢監督は放棄試合も覚悟し球団代表に連絡したが、止められ、22分の中断ののち提訴を条件に再開された。
捕球したのはメガネの青年とされているが、単に相羽が捕球しそこない、スタンドに落ちたボールを拾った青年が消えてしまっただけ、とも言われる。当時の写真を見ると、どうも後者の可能性のほうが高そうだ。
首位は大洋に譲ったが、変わらず好調を続けるのが、
阪神。その大きな要因となっているのが、バッキー、
村山実を軸とした藤本定義監督式の先発ローテーションだ。
杉下茂コーチによれば、「1か月前から担当者が決まっていて、それを1週間前に再確認するが、ほとんど手直しすることもない」という。
藤本監督は「夏場になれば必ず投手を酷使したチームが落ちてくる。見ていてみい」とのことだ。
そうは言ってもゲームによっては主力のリリーフで勝ちに行くケースもあり、この予定が崩れる。藤本監督は、「そういうときはブランクのままにしておく。そして杉下に言ってやるんだ。必ず雨が降る。心配するな」と。
実際、この予想が不思議なほど当たるという。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM