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パンチ佐藤の漢の背中!

バッティングセンターを経営する元オリ・高見澤考史/パンチ佐藤の漢の背中!「3」

 

『ベースボールマガジン』で連載している「現役を引退してから別のお仕事で頑張っている元プロ野球選手」のもとをパンチさんが訪ね、お話をうかがう連載です。今回は元オリックス外野手で(パンチさんと時期は重なっていません)、現在はさいたま市でバッティングセンターを経営する高見澤考史さんをお訪ねしました。

営業権を買い取り完全なオーナーに


高見澤考史氏(左)、パンチ佐藤


パンチ ところで、2008年からはここのオーナーになったんだって? どういう経緯があったの?

高見澤 03年に入社して、半年くらいしたところで、オーナーに「ここを買わない?」という話をいただいたんです。でもそのときは、何の準備も貯金もなかったので、「2、3年経営の勉強をしながら貯蓄も徐々に増やしていき、いよいよ自分で『買います』というタイミングになったら、手を挙げて。そうしたら、僕は君に売るから」と言っていただきました。

パンチ ズバリ、おいくら?

高見澤 ここは6000万です。

パンチ そんな払えるの?

高見澤 そこは当然、お借りして。

パンチ すげえな、俺、ビビっちゃって借金できない(笑)。

高見澤 半分は自己資金で、半分は借りて。08年1月に、営業権を譲渡してもらいました。

パンチ そのオーナーも不思議な人だねえ。情熱のある人を応援し、人を育てるのに興味があるんだろうな。いい人に出会ったね。お金って、「これは俺のだ」って囲い込むと、出ていっちゃうんだって。だけどみんなで分けようとすると、逆に入ってくる。まさしくそういう人なんだろうね。

高見澤 はい、そうだと思います。

パンチ そんな人との出会い、チラシを見つけてくれた奥さんに感謝だね。今はどのくらいまで返したの?

高見澤 もう全部終わりました

パンチ ウソ!? すごいじゃない。スタッフはどうやって集めたの?

高見澤 自分から声を掛けて、来てもらいました。第1号は福留(宏紀=元オリックス)。キャッチボールが柔らかく、きれいで無駄がなかったのが印象にあって。同級生でしたしね。あとはトライアウトに行って、現場でよさそうなキャッチボールをしている人にウチのパンフレットを配って、興味があれば実際来てもらって仕事内容を説明し、気に入ってもらったら入社してもらう、と。

パンチ 僕、以前テレビ番組でアルゼンチンタンゴを踊ったんだけど、ダンスが初めての人でも、手を握って踊っていると、性格が分かることがあるんだよ。野村(克也)監督なんか、バイキングの取り方を見ていると、「こいつはバランスよく取ってるな」とか「こいつは肉ばっかり取るってるな」とか、性格がよく分かるって。高見澤君の場合は、キャッチボールで人柄が分かるんだね。相手がどこに投げるかの気配り、何気ないボールの拾い方とか。

高見澤 分かるというか、そういうのを見るのが好きですね。

パンチ ここだけじゃなく、出張野球教室とかグッズの販売とか、ビジネスもどんどん広げていっているね。

高見澤 そこは、横浜から入った河野(友軌)というのが、パソコンやイラストのセンスに長けていることが分かりまして。幸い、それを応援してくださるお客さんがいらして、その方にアイデアをいただいてやっていくうち、彼もどんどんその仕事が好きになって。野球の指導をしながら、そういう仕事もしてくれています。これまでも関東では結構知られているスポーツ用品店とコラボして商品を出すなど、ネットでいろいろやっているんですよ。今度、オリジナルのブランドを立ち上げて、アパレル系にもチャレンジする予定です。

パンチ すごいねえ!! これはもう、元プロ野球選手として一番の夢――やりたい仕事No.1じゃない?

高見澤 そうなってもらえるように僕らも頑張って、いずれこのスタッフたちがそれぞれ故郷の都道府県に帰って、それをつないでいってくれたらなと思います。

パンチ 今の気持ちを忘れず、いつか各都道府県に1軒ずつできたら素晴らしいね。

高見澤 はい。引退した選手の受け皿になると同時に、野球をしている子どもたちに僕らの気持ちをつなげていき、子どもたちにも大きな夢を持って野球に真っすぐ、堅実に取り組んでいってほしいと思います。

パンチの対談後記


「アーデルバッティングドーム」(埼玉県さいたま市岩槻区府内2-1-10)は16号線沿いにある。「アーデル野球塾」の塾長は元オリックスの福留宏紀


 僕はいろんなところで「神様が見ている」という言葉を使うんですが、最近つくづく「神様は本当にいるんだな」と思うようになりました。

 高見澤君がオリックス時代、コツコツ一生懸命やっていた、その貯金を今、神様が高見澤君に返してくれているんです。そしてこんなふうにハツラツと、真面目に生きている人には、同じような仲間が集まってきて、さらに幸せの輪が広がっていく。ちょっとした不思議な、素敵な物語を今日は聞かせてもらいました。

 プロ野球選手が一生懸命練習し、試合に出て一流選手になるのは、もちろん一番の夢。だけど仮にそれが叶わなくても、一生懸命やっていればこうして受け皿になってくれる先輩方もいるわけですから、現役時代はとにかく思い切りやってほしいですね。高見澤君のバッティングドームが全国に広がり、そこで教わった子どもたちは、野球がうまいだけでなく人間的にも素敵な人になる。そんな場になったら、最高です。

<完>

●高見澤考史(たかみざわ・こうじ)
1975年4月30日生まれ、群馬県出身。前橋工高から東京ガスを経て、ドラフト6位で2001年オリックスに入団。2年目の02年には62試合に出場、打率.279の成績を残すも、故障により03年限りで引退。通算成績は68試合、打率.269(43安打)、4本塁打、26打点。その後は「アーデルバッティングドーム」の社員に転身したのち、経営権を買い取りオーナー社長に就任、現在に至る。

●パンチ佐藤(ぱんち・さとう)
本名・佐藤和弘。1964年12月3日生まれ。神奈川県出身。武相高、亜大、熊谷組を経てドラフト1位で90年オリックスに入団。94年に登録名をニックネームとして定着していた「パンチ」に変更し、その年限りで現役引退。現在はタレントとして幅広い分野で活躍中。

構成=前田恵 写真=高塩隆
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