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【MLB】レッドソックス守護神候補、元広島・ブレイシアの日本でのホロ苦い転機

 

ワールド・シリーズ前にメディア対応したブレイシア広島での経験は今に生かされているようだ


 ワールド・シリーズのメディアデーで、レッドソックスの中継ぎ投手ライアン・ブレイシアのテーブルにアメリカ人記者が群がった。

 マイナー契約でスタートし、7月8日と昇格も遅かった31歳の新人が最速98マイル(約157キロ)の豪速球とスライダーを武器に、33回2/3を投げ、防御率1.60、29奪三振、7四球の活躍。世界一となるチームを支えていたからだ。

「本当にクレージーだよ、今年の1月、ワールド・シリーズ前の会見でこうやって皆さんの前で話す姿は想像できなかった」と笑顔になる。もとは2007年エンゼルスの6巡指名。メジャーでの実績は13年の7試合9イニング登板のみ。14年にはトミー・ジョン手術を受けた。その彼が17年、日本の広島カープ在籍を経て一皮剥けたことで、記者たちはコルビー・ルイスマイルズ・マイコラスのような「日本野球で才能開花」のストーリーを期待した。

 だがブレイシアは期待に合わせることはなかった。「若いころは、力で押そうとしたけど、真っすぐだけでは打たれる。考え方が変わったのは手術を受けてから。コントロールに気をつけ、変化球を練習した」。15年、術後のリハビリ中にアスレチックスが契約、16年は同球団の3Aで46試合60回2/3を投げ、防御率3.56、70奪三振、19四球。その活躍を見てカープが声をかけたのだった。

 しかしながらカープでは「シーズン序盤は変化球がいま一つだったし、真っすぐの速度も上がらなかった」と、一軍と二軍を行ったり来たり。「3、4回は落ちたかな」と言う。17年10月26日、傷心の中、帰国した。「契約上、カープが希望すれば来季も残ることになっていたが、球団にその気がないのは分かっていた。まだ野球は続けたかったから、アメリカに戻って投げる機会を得ないとと考えた」とブレイシア。

 メジャー全球団にメールを送り、1月はアリゾナで10球団のスカウトを前に投球練習。しかしレッドソックスから声がかかったのは2月下旬で、行き先もマイナーキャンプだった。

 それでも3Aで実力発揮、課題だったコントロールは改善されており、メジャー昇格を果たした。もしブレイシアが17年、開幕直後から今のピッチングができていれば、18年もカープは引き止めていただろうし、彼もマイコラスのように、日本での経験を笑顔で語れたことだろう。

 だがそうはならなかった。17年の1年間はただ時間のムダだったのかもしれない。しかしながら彼はこうも言った。「前はよく四球を出し、二死から打たれることも多かった。日本で二軍に落とされたときに自分のピッチングと向き合った。カープの小林(小林幹英)コーチ、ジョニー(畝龍実コーチ)さんともよく話した。メカニックを安定させるために、繰り返し練習した」

 苦い経験だがそれが転機となった。今、背番号は70番だが、広島でも70番だったと明かす。「今から思えば良い前兆だったのかなと。幸運の女神かな。この番号はこれからもずっとキープするよ」。レッドソックスは現時点でクローザーのポジションが空いており、デーブ・ドンブロースキーGMは「ブレイシアも候補」と話している。

文・写真=奥田秀樹
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