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週刊ベースボール60周年記念企画

名投手杉浦忠、先発に別れ……/週べ1965年6月14日号

 

 今年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。

スペンサーの手帖


表紙は左から長嶋茂雄金田正一王貞治


 今回は『1965年6月14日号』。定価は50円だ。
 5月24日、南海の東京での宿舎に報道陣が50人ほど集まった。
 杉浦忠が自身の右腕の状態について、午後4時から会見を開くと知らせがあったからだ。 

 用意された部屋に杉浦と鶴岡一人監督が現れると、一斉にカメラのフラッシュがたかれた。
 まぶしそうに目を細めた杉浦が
「こんなに写真を撮られたのは初めてや」と笑うと、鶴岡監督が「まるで内閣改造みたいだね」
 これで緊迫した雰囲気が一気にゆるんだ。
 冒頭、藤江マネジャーの発表は次のようなものだった。
「4年前は、右腕の動脈が完全に閉塞していたので右腕切断の危険性もあったが、手術で完治し、いまはその危険はない。今回は手先にいく2本の血管のうち動脈ではない1本が細くなっていた。長い時間の運動はよくないが、短い時間の軽いものなら差し支えないと思われる」
 鶴岡監督は今後の起用について、
「先発、完投はいけないというので、これからは2、3イニング投げる程度のショートリリーフとして使い、投げた後は十分に休養させ、様子を見たい」と語った。

 杉浦は「先発ができないのは正直寂しい」と言いつつ、
「最悪の場合、切断と思っていたんで、まだ投げられると分かってほっとしています」。
 さらに「ほかに悪いところは」の質問には、
「別にありません。ただ、頭が悪いだけです」と言って笑った。

 ONが危うく大ゲンカしそうだった話もあった。
 長嶋茂雄は打撃練習では人のバットを勝手に使うことがあった。
5月12日、富山での試合前にもそれで誰かのバットを折ってしまったのだが、実はそれが王貞治のバットだった。
 しかも脇腹を痛めていた王が、わざわざ200グラム軽いバットを注目し、つくらせたもの。王は誰が折ったか分からぬうちは本気で怒っていたが、長嶋と知り、「仕方ないか」と苦笑いになったという。

 セでは王、パでは南海・野村克也、阪急・スペンサーの三冠王に向け快走。
 王は本塁打トップ、打率、打点は2位、野村は本塁打、打点がトップ、スペンサーは打率トップ、本塁打、打点は2位だった。

 この中でスペンサーが一番意識していたのはホームラン王だ。
「勝負どころは投手にバテ症状が出る夏場だ。野村は固め打ちがあるだけに、調子に乗ると怖いが、逆に調子を落とすと大きくコンディションを狂わせる。しかし、自分はコンスタントに打てる自信があるから、それほど神経質になる必要がない」
 と自信たっぷり。
 話題になっているシークレットノートの話もあった。ありふれた黒い手帖ながら中にはパ・リーグの投手のデータがぎっしり書き込んであったという。

 では、またあした。メリークリスマス。

<次回に続く>

写真=BBM
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