昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 変わらずすさまじい殿下人気
今回は『1970年3月9日号』。定価は80円。
巻頭はやっぱり近鉄の新人・太田幸司。今回はキャンプの休日の様子だ。
「殿下」という愛称もすっかり定着。キャンプ地の駐車場は連日、500台のキャパがいっぱいになった。最初の休日は5000人のファンが集まり、減るかと思った次の休日は1万人だった。
阪神から近鉄に移籍していた
辻佳紀も「昨年(阪神の新人)の田淵(幸一)も問題にならない騒ぎだ」と驚いていた。
身売りのウワサもあった大洋が息を吹き返す。
「鯨一頭獲ればなんとかなる」という大雑把さもあって経営危機にあり、赤字を垂れ流す球団を手放すのではと言われたが、日ソ漁業交渉で漁獲量が2割増しとなり、かつ魚の価格が高騰したことで経営が良化したらしい。
まだまだ球団の赤字は大きかったが、社内で「会社の団結の象徴として残してほしい」という声が多く、一気に身売り話も消えたという。
高野連が訴えられた話もあった。
センバツの選考で東京からは日大三高と堀越高が選ばれたが、これに対し、秋の東京大会で準優勝していた帝京商工高が高野連相手に訴訟騒ぎを起こした。
ちなみに帝京商工高は準決勝で堀越高を破り、決勝で日大三高に敗れた。
帝京商工高は、正式決定前に「もう決まった」とばかり監督の胴上げなどをし、喜んでいたという。
2月5日には、佐伯達夫会長宛てに「落ちた理由を明らかにしてほしい」と手紙を出したが、少したって届いた回答書には「資料不足」とあったという。
これは秋季における21校との対戦成績を提出しなければならなかったところが、学校の火災により、3校分の対戦成績詳細の資料が紛失したことをさしていた。
帝京商工は回答到着の直前、2月20日、大阪地方裁判所に「第四十二回選抜高校野球大会出場仮処分命令申請書」を提出。
資料の紛失について「東京高野連に話したら、それでいいと言われた」とし、申請は撤回しないと語り、「もつれると高野連からの除名処分があるのでは」の質問には「覚悟の上」と言い切った。
プロもアマもあわただしい年だ。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM