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【MLB】地方都市はマイナー球場建設で潤える?

 

マイナーの球場は地方都市にとっても大きな収入源のひとつとなっているが、その建設費用も膨大になるため、建設に対し賛否両論が起こっている(球場はシャーロット市のBB&Tパーク=ホワイトソックスマイナー球場


 マイナー・リーグの球場ですら美しく、設備もとても充実している。これはアメリカで野球を取材して常に実感することのひとつである。現在ソフトバンク和田毅投手が、オリオールズでトミー・ジョン手術からの復帰を目指しマイナー登板を繰り返していた2013年、筆者は頻繁にバージニア州ノーフォーク市のハーバー・パークを訪れていた。

 ノーフォーク海軍基地は世界最大規模で造船業も盛ん。市は人口24万人だが、その近辺も加えた都市圏は167万人もの人々が暮らしている。オリオールズ傘下3Aタイズは市の看板チーム。毎晩、住民をダウンタウンに集め、社交の場になる。1993年の建築で少し老朽化したとはいえ、1万2000人収容で、24個のスイートルームに、見晴らしのいい球場内レストランと立派な施設だった。マイナーの球場では全米一と呼ばれた時期もあったそうだ。

 和田のいた当時、チームは市と15年の契約延長で合意、市は球場改修に250万ドルの新たな出費を約束している。とはいえ、全米に約160あるマイナー球団と、球団のあるコミュニティがすべて「WINーWIN」の関係だとは言えない。

 チームはプロ球団の経済効果をアピールし、新球場建設を要求してくるが、数十億円の税金を投入してまで、建てる価値があるかどうかは微妙。州や市は大概二の足を踏む。レッドソックス傘下、3Aポータケットのマッコイ・スタジアムは、00年、大家友和投手が完全試合を達成した場所だ。老朽化が進み、チームは新球場建設を決定。総工費は8300万ドルで、ロードアイランド州に2300万ドル、ポータケット市に1500万ドルの出費を求めた。当然地元は躊躇する。そこで元レッドソックス球団社長で、敏腕のラリー・ルッキーノオーナーは、マサチューセッツ州第2の都市ウスターにも話を持っていった。

 コミュニティにとっての旨味は、チームが存在することで、よそから旅行してくる人々が増え、ホテル、レストランなど旅行業界が潤う。球場ができれば、そこで働く人たちの雇用も生まれる。街のイメージも良くなり、そこでビジネスをしようという企業が新たに出てきて、アパートなども新築される。

 その一方で所詮はマイナー球団であり、経済効果はMLB球団の10分の1に過ぎない。雇用がといっても、野球シーズンだけの仕事で、最低賃金レベルの仕事が少なくない。加えて気をつけねばならないのは、総工費が途中から増えるリスクも負わねばならないこと。コネチカット州の州都ハートフォードは、2Aチームを誘致すべく、新球場を建築することにした。

 当初は5600万ドルの見積もりだったが、工期が長引き、2年間で建築費は7100万ドルに膨れ上がり、市の財政を圧迫した。しかしながら新しいダンキンドーナッツ・パークは大評判で観客も入り、先日、野球専門誌から年間最優秀野球場に選ばれた。

 ハートフォードは近年いくつかの企業が他州に移転して問題になっていたが、街のイメージが好転したと見る向きもある。是か非か、ポータケットもウスターも頭を抱えるのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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