独特のフォームだが、理にはかなっている/写真=榎本郁也
理にかなったスイング
混戦が続くセ・リーグに対し、パ・リーグは
西武が走っています。その最大の要因は、5月8日現在、チーム打率.291の強力打線です。チーム201得点は、2位の
ソフトバンクと71点差ですからすさまじいですね。
この好調打線で四番にどっかり座るのが、プロ5年目、3.4月の月間MVPにも輝いた
山川穂高選手です。昨年後半にブレークした選手ですが、今季は12本塁打、39打点がリーグトップ。打率はリーグ6位の.314ですが、33四死球があるので出塁率は.478と高く、得点圏打率はなんと5割です。まさに、手がつけられない状態となっています。
やや太めの体型もあって、力任せのタイプと思われがちですが、私は非常に理にかなったスイングをしているな、と思っていました。ただし、私の体力ではマネできないスイングですし、子どもたちが、技術的にお手本にするスイングという意味でもありません。自分の特徴、ストロングポイントを生かしたスイングということです。
彼の最大の武器は、あのスイングスピードです。おそらく、背筋が強いのだと思いますが、あの爆発的なスピードがあるからこそ、球をしっかりと引き付けることができ、ボールの見極めもできます。
独特のタイミングの取り方も、同様にこのスイングスピードがあってこそでしょう。
ゆったりした構えから足を上げ、1回ヒッチし、グリップを胸のあたりまで下げます。このとき軸足にしっかり力をため、ボールを引き寄せてから一気に振っています。
昔はヒッチを悪い癖のように言う方もいましたが、下がったまま振るならともかく、そこからグリップが上がっていますので、まったく問題ありません。ワインドアップの投手が腕を上げた状態から一度下ろし、タイミングを取りますが、それと同じことです。自然な流れだと思います。
1年戦い抜けるか
ただ、まだ不安もあります。彼はまだ1シーズンを通して一軍のレギュラーで戦ったことがありません。いまのところ打線全体の調子がいいこともあって、それほど厳しくインサイドを突かれているわけではありませんが、これからは当然、そこを攻められ、研究もされるはずです。自分のバッティングを見失うこともあると思いますし、ケガの危険もあります。さらに言えば、疲労がたまったとき、いまのスイングができるかということもあります。
能力的に非常に高い選手であることは間違いありません。ただ、本当に球界を代表するような選手になれるかどうかは、これからの夏場をいかに凌いでいくかにかかっていると言えるかもしれませんね。