内海、次が大事だぜ/写真=高塩隆
大事なのはストレート
やっと勝ったね。5月10日、
阪神戦(東京ドーム)で勝利投手になった
巨人・
内海哲也さ。306日ぶりだったらしいね。いったい昨年の何月何日以来かと思ったら、7月8日だって。これ、俺の誕生日だぜ! いい日に勝ったんだから続けんとな。
6回途中2失点だったけど、俺はいままでのピッチングをしていたら、やられると思って見ていた。要は変化球主体で、四番バッターには最初から逃げ腰というピッチングね。
あいつは14年以降、2ケタ勝利はない。ベテランになって高い給料をもらってから、勝たなきゃいけないという重圧が出てきたこともあったのかな。もともと変化球で打たせて取るタイプではあったけど、より四球が増え、三振が少なくなってきた。年齢で球速が落ちたことで、さらに変化球が増え、慎重にコーナーを狙い、カウントを悪くして、最後は甘い球をやられるパターンね。それが、この日は三振が6で四球が1だから逆パターンだよね。しっかりストレートを主体に組み立てた結果だと思うよ。過去のデータもあって、阪神打線は明らかに変化球待ちだったしね。
球速は最速で136キロくらいだったけど、東京ドームのスピードガンは左投手が出ないんだ。スピードガンを置く位置を変えてからね。だからあの試合は140キロ前後じゃないかな。速くはないけど、それでもストレートを軸にし、しっかり腕を振らないと投手は勝てないんだ。
俺も
広島時代、コーチの
長谷川良平さんに「真っすぐを磨け」としょっちゅう言われてた。193勝を挙げた、小さな巨人ね。なのに1984年、チェンジアップを覚えようとしてヒジが下がり、ストレートがいかなくなったことがある。以来、磨くクセをしっかり染みこませて、いまはせっせと車を磨いてるよ。
オジサンとヤングマン
俺が内海で覚えているのは、11年。震災で開幕が1週間遅れたけど、開幕投手が内海のはずが、直前に風邪をひいてね。投げられないことはなかったんだけど、
原辰徳監督が「体調管理ができないなんて!」と激怒して
東野峻にし、結果的に東野、内海で連勝した。あの年は、ボールの反発係数が変わって、まったく飛ばなかった。マジで、俺が投げても勝てたんじゃないかな。内海は結果的に、この追い風で18勝し、翌年も15勝で2年連続最多勝。ただ、ボールが元に戻ると思うように勝てなくなって、悪循環になって変化球主体の逃げのピッチングになってきた。
これで内海は通算129勝。俺が139勝だからカウントダウンが始まったな。ただ、内海、脅すわけじゃないけど、これからの10勝は大変だぜ。まあ、140勝の川口超えを目指して頑張ってくれ。
あの日の巨人は
阿部慎之助がホームランを打って、
上原浩治が1カ月ぶりのホールド。ベテランたちで勝った試合だったけど、翌11日は、
菅野智之が7連続三振もあっての完封勝利。
岡本和真が2安打、
吉川尚輝がタイムリーと若手で勝った試合だった。菅野の風貌は、もう30歳過ぎに見えるけど、まだプロ6年目の28歳だからね。いまの巨人はオジサンと
ヤングマンのパワーがうまく組み合わさってるね。ただ、それを一人で体現してる男がパッとしないんだ。次の12日、
中日戦で先発した
田口麗斗さ。22歳ながらオッサンの腹を持つ男。コーチ時代からよく言ったんだが、球のキレで勝負するタイプは、体のキレ、柔らかさの勝負なんだ。
田口、まずは、もうちょっと走らんかい! ピッチャーは走ってナンボやで。