21世紀枠で甲子園初出場

慶大に進学する大分舞鶴高出身の奥本は、抜群の制球力が武器である[写真=田中慎一郎]
慶大に進学する新1年生(2月入部組)が2月9日、神奈川県横浜市内の下田グラウンドで報道各社の取材に応じた。
大分舞鶴高・奥本翼投手は1年の浪人を経て、FIT入試で法学部政治学科に合格した。
1月8日に入寮。翌9日から練習に参加した。奥本は浪人組であり、高校の授業がない。慶大・堀井哲也監督は1日でも早くコンディションを戻させたいという「親心」により、早い段階で合流させたのだった。
「1年間、勉強ばかりで、体を動かす時間がありませんでした。この1カ月で、徐々に現役時代の体に戻ってきました」
高校3年春、センバツ21世紀枠で甲子園初出場。エース左腕・
宮城誇南(早大新2年)を擁する浦和学院高との1回戦で敗退した。
「2年時の大会で、慶大の関係者から声をかけられまして、AO入試に挑戦しようと思いました。そこで慶應について勉強していくいうち、あこがれを持つようになりました」
現役ではAO入試で不合格。地元・九州の大学に合格したものの、慶大への思いを捨てきれず、浪人を選択した。朝8時から夜9時40分まで、予備校に通い詰める猛勉強。AO入試と法学部のFIT入試を見据えながら、不合格に備え、一般入試のための勉強も並行していた。1年間で偏差値を「10」上げる成果を出し、FIT入試を突破したのだった。
浪人期間中、気晴らしに夏の甲子園をテレビ観戦。慶應義塾高の107年ぶり2度目の全国制覇は「(合格すれば)日本一のメンバーとやれるかもしれない」と、受験勉強の励みとなった。
もう一人、刺激を受けたのは、大分舞鶴高の先輩である青学大・
常廣羽也斗(
広島1位)の活躍だった。昨年12月には地元・大分での会合で対面。写真撮影に応じてもらい、サイン色紙をもらった。「同じ大分シニア出身で、自分が中学3年時に常廣さんは高校3年生で、OB戦で対戦したことがあるんです。打席に立って、空振り三振でした。常廣さんは舞鶴初のプロ野球選手。自分も続きたい」。
最速139キロ。制球力を生命線と自覚する。慶大の先輩にはコントロールが抜群の3年生エース・
外丸東眞(前橋育英高)というお手本がおり「いろいろ吸収しています」と語る。慶大は2月17日からの中津キャンプを経て、20日からの鹿児島キャンプに入る。奥本は地元ということで「メンバーに入りました。ありがたい。競争を勝ち抜いて、神宮で投げたい」。変化球はカーブ、スライダー、チェンジアップ、
ナックル、ツーシームと多彩で、打者の的を絞らせない。クレバーな投球に期待である。
文=岡本朋祐