MLBでは2000年代中盤辺りから徐々に強打者が「二番」に座ることが多くなった。そして昨今の「フライボール革命」にともないOPSの指標の高い打者、チーム内で最強の打者が二番に入るようになっている。そして実は、そこからさらに進歩し、“新しい二番像”が生まれつつあるようだ。 文=奥田秀樹 写真=Getty Images ※成績は現地時間8月16日現在 昨季は二番打者で首位打者となりチームを7年ぶりの地区優勝に導いて、ナ・リーグMVPも獲得したイエリッチ。今季もOPSでMLB2位。最強の二番打者の1人となっている
MLBの二番はOPS指標と大きく関係する
MLBで強打者の指標として用いられるOPS(出塁率+長打率)。今季この全体1位となっているエンゼルスのマイク・トラウト(1.112)も二番で117試合に出場している。さらに2位のブリュワーズのクリスチャン・イエリッチ(1.098)は、100試合で二番に入っている。
8位でメッツのピート・アロンソ(.964)、12位のダイヤモンドバックスのケテル・マルテ(.949)も主に二番を打っている。チーム内最強の打者がこのスポットに入っているのが現状だ。
MLBでも二番打者といえば、長い間バントや進塁打など小技専門で、投手に球数をたくさん投げさせ、三番、四番打者のためにお膳立てをするのが仕事とされてきた。打力においてもパワーに欠け、八番、九番打者よりはマシというレベルだったのだ。歴史的に見てもMLBで二番打者として2000以上打席に立った156選手の半分以上は長打率.400以下。今季長打率.400以下の選手とは、メジャーで規定打席を超えている146人中、124番目以下である。
そんな野球界の通念、常識が現在ではすっかり覆されてしまった。2007年に出版された「PLAYING THE PERCENTAGES IN BASEBALL(著者=トム・タンゴ、ミッチェル・リッチマンら)」では「統計的には二番打者は、三番打者と同じだけ、重要な局面で打順が回ってくる」。「その上、二番のほうが打席に立つ機会が多い(シーズン平均で二番は731打席、三番は716打席)。だから二番打者には三番打者よりも優秀な打者が入るべき」と謳(うた)っているのだ。
長い間、中軸打者である三番から五番の前に走者をため、彼らに打点を稼がせるのが大事とされてきた。だがチーム全体でなるべくたくさん得点を挙げようと考えた場合・・・
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