2年連続の開幕投手に内定した。昨季は投手3冠を遂げ、2年ぶりのリーグ優勝に導いた。現状に満足することなく、向上心を持って進化を続ける。今季からは選手会長に就任。チームを結束させる役目も担う。そこに気負いはない。まずは自身の投球に専念することだけを考えている。 取材・構成=椎屋博幸 写真=松村真行、佐藤真一 打者1人に2、3球のイメージ
最多勝、勝率第一位、最多奪三振の3冠を獲得した2025年は自身初の開幕投手を務め、8回2/3を無失点とこれ以上ないスタートを切ると、そのままシーズンを駆け抜けた。今年は昨季の勢いのままに……とはいかなかった。さらなる進化を求め、新たな発見を導き出す。 ──3月6日、
ソフトバンクとのオープン戦(甲子園)では3回無失点。順調な仕上がりであると見受けられました。
村上 いやあ、まだですね! 球速的にも、もう少し出ると思いますし、今年は変化球の変化を求めて投げているので、そこが未完成だな、と。変化球自体を増やすのではなく、変化の幅を変えたいと思い、オープン戦では試してきました。握り方を変えることで、曲がり幅に違いを生みたいと思っているんです。
──昨年は投手3冠です。これだけ圧倒的な成績を残していれば、何も変化を求めなくていいとは思いますが。
村上 でも、自分自身、その変化球に対してしっくりきていなかったので、変えていこうと。ここまでは、いい感じで投げられているので、使えるとは思います。もしシーズンに入ってダメだったら、昨年までの握りに戻せばいいだけで、深刻には考えていないです。段階的には、描いている形にはなってきています。完成すれば、昨年以上に楽に投げられるのではないかと。
──「昨年の投球より楽」と言われると毎試合完投に近いことになりますね。
村上 昨年以上に球数を少なくしたいので。この変化球が出来上がるとそのような投球ができるかなと。そうなれば、イニング数も増えていく可能性も高い。これまで1人の打者に5、6球かかっていた数が、2、3球で終われば、長いイニングを稼げますし、1試合平均1イニングは多く投げられる。

今年のテーマは四球を与えず、2、3球以内で1アウトを奪うこと。それがチームの勝利に導く近道だと考えている
──2、3球で抑えていくとなると、打者が「打てる」と思うコースに投げないと反応してくれないですよね。
村上 そこは(ストライク)ゾーンの中で動かしていくぞ、という意識で投げています。打てると思わせたあと、バットの芯を外していくというイメージですね。
──村上投手の場合、真っすぐで押し込むという投球イメージもあります。
村上 真っすぐに関しては「強さ」を意識しています。簡単に打たれない、見た目よりも速く感じさせる、というイメージで投げています。
──3月6日のオープン戦では、高め真っすぐでの三振が印象的でした。それも同じ意味合いで投げていたのでしょうか。
村上 あれはですねえ、投げミスなんです(笑)。全然ダメな内容。偶然にも打者がバットを振ってくれたので三振という結果になりました。自分の中で、納得してベンチには戻っていなかったです。狙ったコースとは、まったく違うところにいってしまいましたから。
──完璧な出来にならないと開幕は迎えられないという感覚があるのでしょうか。
村上 そこまでのこだわりはないです。完璧を求め過ぎると自分が苦しくなるだけなので。そこは気楽に考えながら、投げていきます。
──高めの真っすぐで勝負をするという考えはありますか。
村上 その点については、どの高さに投げればバットを振ってくれるかという考え方もあります。対戦する打者が打てると思う高さに、伸びのある真っすぐをいかに投げられるかが、少ない投球で抑えていく要素にもなっていきます。
──高めの甘いコースに投げると、とらえられる危険性が高まる。そこのバランスは非常に難しいと思います。
村上 本当に甘いコースに入るのが一番怖いですからね。ただ僕自身、真っすぐだけで抑えられるかと言えば、そういう投手ではないです。高低やコース、コンビネーションが自分の持ち味なので、打者との駆け引きの中で僕は生きています。

ストライクゾーンの中で変化するボールを投げ込み打者を打ち取る。昨年の曲がりとは違う変化球を考案中で、完成は近いという
投球の無駄を省く
──先ほど「長いイニング」と言われました。昨年は175.1イニングでした。
村上 今年は「25試合で180イニング」に到達したいんです。昨年は26試合で175イニングでした。そこを考えるともう10イニングは多く投げられる計算になり、狙っていきたい。200イニングまで残り25イニングでしたが、そこはすごくレベルが高いな、と正直思いました。だから諸先輩たちが200イニングを投げていたことを考えるとすごい数字だな、とあらためて思いました。
──25試合で200イニングだと、ほぼ毎試合完投ペースですね。
村上 25試合で200イニングを投げられたら、平均8回を投げ切る計算です。そこには到底、追いつけないです。200イニングを達成するには、完投数を増やしていくしかないですね。
──25試合で180イニングは平均7.2回です。
村上 沢村賞も180イニングが規定になりました。沢村賞を狙うということではなく、その基準をクリアしていきたい、今年は特にそこを意識しています。
──その175.1イニングでWHIPが0.89という素晴らしい数字でした。(※WHIP=1投球回あたり何人の走者を出したかの数値)
村上 自分で言うのもなんですが、23年が、0.74というとんでもない数字だったんです。そこを求めたい。この数字が低いということは、それだけ三者凡退が多く、リズムよく投げられているという証拠でもあります。
──被打率も低いほうがいいですが、それよりもWHIPの低さを求めたい。
村上 被打率も下げたいですが……まあWHIPにも関連しているので、こっちもこだわっていきたいですね。打たれたらWHIPの数字は上がりますからね。被打率を低くいくこと=WHIPを下げることですけど、WHIPでさらに大事になるのは「与四球」です。死球は僕の中では打者を攻めた結果だと思っていますので、割り切れる部分でもあります。ただただストライクが入らずに四球を出す、というのが一番無駄で、絶対にその機会を減らさないといけないです。
──3月6日のオープン戦では、四球ゼロでした。その意味でも悪い投球ではなかったと思います。
村上 1回の最後の打者の高めの真っすぐの三振は、3ボール2ストライクから。見送られたら四球。あの場面、もし変化球で、低めにストライクからボールになる球を振らせての三振なら、僕の中ではOKになるんです。フルカウントで真っすぐを選択したのならば、ストライクゾーンで空振りを取らないといけない。でも高めに浮いたので、僕の中では四球と同じ内容という解釈になります。
──あの場面でストライクゾーンに投げ込んで、打たれてもよかったのでしょうか。
村上 ヒットであれば「まだまだ真っすぐの質が良くないんだぞ」と思えますから、そっちのほうがいいですね。もしあのときゾーンの中で空振りが取れていれば、もっと自信につながっていたと思います。だからこそ、開幕に向けて調整することが出てきたので良かったと思いました。
開幕はみんな緊張する
──昨年も村上投手は開幕投手を務め、今年もすでに内定しています。先ほどの言葉を借りれば25試合分の1試合ですよね。
村上 はい。基本何も変わらず、です。以前……かなり前ですかね、能見(
能見篤史、侍ジャパンコーチ)さんとお話をしたときに「先発投手からしたら、逆に開幕戦の登板はいいよね」と言われたんです。「先発投手以外のほかの選手たちもみんな緊張して開幕戦に臨むから」と。つまり、先発五番手、六番手になると、レギュラーの野手はすでに数試合が経過して緊張が抜けてきている。その中で、その年初めて登板する先発だけが緊張している。リ
ラックスに近い状態の打者と戦わないといけないほうがしんどいんだ、と。
──開幕戦で打者も緊張している……。
村上 そうです。こちらが緊張で投げミスをしても、打者も緊張しているから打ち損じをしてくれる可能性が高いんじゃないかということですね。それを聞いて昨年、その気持ちで投げて、2回以降は本当にリラックスして投げられました。1回だけは緊張していましたが(笑)。今年も同じような考えでマウンドに上がると思います。
──能見さんの言葉の裏には「開幕戦は緊張していいよ」ということもある。
村上 まさしくそうかなと。今年も「緊張していいかな、みんな緊張しているから」と思いながら投げると思います(笑)。
──それであれば、昨年の3冠以上の投球が期待できそうですね。一方で、一番気にされている防御率は……。
村上 去年、防御率2点台(2.10)だったのですが……。23年に1点台を経験させてもらったので、もう1回そこに到達したいとは思いますし、180イニングで防御率1点台を目指せば、必然的に勝利数も増えると思います。
──ライバル投手を意識するという問題ではない、考え方ですね。
村上 人は関係ないです。まずは計算できる投手になりたい。僕がイニングを稼げば、投手陣の負担も軽減できます。まずは全試合、クオリティースタート(6回3自責点以内)を達成したいと思っているので……。それが達成できれば、チーム的にいろいろと計算できます。首脳陣は中継ぎの計算ができます。野手は何点奪えば勝てるな、という感覚が出来上がっていきますので、そうなりたいですね。
──すでにそういう投手だと思います。しかもハイクオリティースタート(7回2自責点以内)が当たり前の投手です。
村上 クオリティースタートは最低限の話です(笑)。どんなに調子が悪くてもそれを達成すると思ってマウンドに上がります。そこから、ハイクオリティー、それより良ければ完投。そして完封を目指します。昨年2イニングで降りたこともあり、悔しかったので。
──その目標が達成できることで、連覇が近くなりますよね。
村上 今年から選手会長になり、チームのことを考えることがあります。でも、経験のある先輩方がたくさんいます。チームの主軸もほとんど先輩なので、助けてもらいながらやっていくだけです。まずは個人の成績を良くすることが、優勝への近道だと思っています。
──選手会長としては、連覇と日本一になったときのビールかけのあいさつをしっかりするくらいですかね?(笑)。
村上 歴代の選手会長はほぼ何も言えてないので(ビールかけがフライングしてスタートして)(笑)。だから僕はめちゃ長いあいさつをしようかな。「このたびは、お集まりいただき……」から始めようかなとか(笑)。その前にしっかりと気を引き締めて、連覇を目指して、個人でもしっかりと成績を残せるように、投げていきます。もちろん、厳しいシーズンになることは当然だからこそ、自分たちから攻めていく野球をしていきたいです。

今季から選手会長になったが、経験豊富な先輩たちが多いだけに、チームをまとめることに尽力もしつつ、まずはエースとしての責任を全うすることが最優先だと考えている
■2025年セ・リーグ勝率ランキング 
※△左投げ
PROFILE むらかみ・しょうき●1998年6月25日生まれ。兵庫県出身。175cm84kg。右投左打。智弁学園高から東洋大を経て2021年ドラフト5位で阪神に入団。右腕のケガのまま入団し、2年目まで二軍、中継ぎだった。3年目の23年に開幕一軍入り。4月に
巨人戦で初先発し7回まで無安打投球。そこから快進撃で10勝6敗とリーグ優勝に貢献し、日本一に。リーグMVPも獲得。25年は開幕投手を務め14勝3敗で3冠を獲得し2年ぶりのリーグ優勝に貢献。今季は選手会長に就任し、2年連続の開幕投手も内定している。