
写真=戸加里真司
東京ドームのファンを前に攻守走で躍動し、これ以上ないほどに“らしい”最後の雄姿を見せて笑顔でグラウンドをあとにした。
昨年限りで現役を退いた
長野久義氏の引退試合となった3月14日の
日本ハムとのオープン戦。8回に1日限りで“現役復帰”した主役が代打で登場すると、大歓声に包まれる。カウント1-1から3球ファウルで粘ると、最後は
柳川大晟の149キロのストレートをしぶとく中前に運んだ。さらに続く
岸田行倫の右前打で三塁に激走。その後は右翼の守備に就くと、「新庄(
新庄剛志)監督が『ライトのほうに打て』と指示をしているのも見えて、すごくグッときた」。相手指揮官の思いに応えるように、
常谷拓輝の右飛をガッチリと捕球してさらなる大声援を浴びた。
「ボールを捕った瞬間、スタンドとファイターズファンの皆さんもすごい拍手をしてくれてたので、本当に感動した」
チームメートたちも背番号7のラストダンスを見届けた。
坂本勇人は「さすがです。最後にヒットを見ることができて、フライを捕る姿も見られたので、良かった。みんなうれしかったんじゃないですか」と笑顔を浮かべた。
試合後には場内を一周すると、最後はサプライズで登場した
原辰徳前監督が花束を贈呈。オープン戦としては異例の超満員となったスタンドに驚きの表情で、「引退試合と銘打ってこれだけのお客さんが来てくださるというのは、あらためて長野久義という選手の偉大さというものに認識を新たにした」と賛辞を送った。
最後の晴れ舞台でも、気遣いの男らしい言葉が口をついた。日大4年だった2006年秋のドラフトでは、日本ハムから4巡目指名を受けながらジャイアンツへの思いを貫いて入団せず。当時、日本ハムのスカウト部長を務めていた
山田正雄氏(現日本ハムスカウト顧問)がこの日、球場を訪れていたことを明かし、「今日が最後ということで来てくださった。指名してもらって行かなかったが、ずっと連絡をくれていた。本当に感謝しています」。
現在は編成本部参与の肩書を持ち、大学院で学ぶための準備も進めるなど、すでに新たな道を歩み始めている。「本当に周りの方に恵まれた野球人生だった」という言葉を残してグラウンドをあとにしたが、東京ドームに最後まで響き渡っていた「長野
コール」は、ファンたちからの未来へ向けた最高のエールだった。
PROFILE ちょうの・ひさよし●1984年12月6日生まれ。180cm85kg。佐賀県出身。筑陽学園高-日大-Honda-
巨人10[1]-
広島19-巨人23=16年。【通算成績】1651試合1512安打163本塁打623打点99盗塁、打率.280。