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Vol.9 山城大智[沖縄尚学高・投手]&北條裕之[八戸学院光星高・内野]

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今回はクローズアップするのは春のセンバツ出場が決まった2選手。
まず投では昨秋の明治神宮大会を制した沖縄尚学高のエース右腕・山城大智。そして打では阪神で奮闘中の史也を兄に持つ遊撃手・北條裕之。
まだまだドラフト候補としてはステップアップが必要だが、春の甲子園で主役になり得る2人の現状を探る。


山城大智[沖縄尚学高・投手] “小川2世”貫けるか


 ルーキーイヤーに16勝を挙げ、セ・リーグ新人王に輝いたヤクルト小川泰弘。左足を高々と上げ、右足をヒールアップさせる“ライアン投法”が最大の特徴だが、この山城も同様の投球フォームを用いている。小川の特徴は前足の着地までに間があり、腕が遅れて出ていくこと。これに必要となるのが股関節の強さなのだが、山城はまだそれが足りておらず、連投になれば苦しくなる。その完成には時間が必要だろう。

 ストレートのキレ、回転が足りないのも、リリースに力を集めるフォームになっていないため。球持ちが短く、外角低めに球を押し込めていない。それでも得意のスライダーはコントロールが良く、高校生としてはレベルが高い。まずは軸となるストレートを完成させ、それから変化球を磨いてほしい。



 簡単にストライクを取りにいき、打たれるケースが見受けられ、その投球術には課題が多い。球持ちが短いため制球力も乱れがちだ。ただ、これらの欠点は下半身強化により改善されるはず。まずは確実にストライクを取れる球を手にしたい。

 守備ではまだまだチャージが弱い。投げた後の一歩目を常に意識してほしい。けん制、クイックに関しては注意力があり、走者を塁に引きつける間を持っており、この点は評価できるだろう。また、打者への集中力、闘争心があり、メンタルは強いものを感じさせる。コントロールの不安があるが、そこでも辛抱強く投げており、芯の強さが見てとれる。

 冒頭でも触れたとおり、このフォームを極めるためには股関節の柔らかさが必要になる。上半身主導の今のフォームではヒジに負担がきてしまう。この冬に、どれだけ体幹を強化できているか。春にチェックすべきポイントはそこである。

 今後の課題としては、ヒールアップをどう使い分けるか。当然、有走者時には対策が必要となる。試行錯誤をしながら理想のフォームを探ってもらいたい。地肩は強く、胸板も厚い。下半身強化ができればストレートはさらに速くなる。すべてがこれからの投手と呼べるだろう。

■採点表
投球フォーム 8.0
ストレート 7.5
変化球 8.0
投球術 7.0
制球力 7.0
守備力 7.5
メンタル 7.5
体力 8.0
将来性 8.5
総合力 8.0
合計 77.0
※採点の基準は2014年のドラフト対象選手

PROFILE
やましろ・だいち●1996年9月26日生まれ。沖縄県出身。175cm 75kg。右投右打。今帰仁中では軟式野球部に所属。沖縄尚学高では1年秋からベンチ入りし、2年夏の甲子園ではリリーフとして登板。2年秋の九州大会では準決勝の鎮西高戦で1安打完投勝利するなどして優勝に貢献。続く神宮大会では連打を浴びて降板するも、チームが逆転すると再登板。優勝投手となった。

北條裕之[八戸学院光星高・内野手] 求められる“個性”


 兄の背中を追いかけるように八戸学院光星高に進んだ北條。同じ遊撃のポジションを任されているが、今はセンスの良さのみで野球をやっている印象が強い。点数はどれも合格点に達しているが、突出したものがない。今後、自身のプレーのストロングポイントを見いだしたい。

 打撃フォームは左足を大きく上げる兄譲りのものだが、タメが足りないためインパクトで強くたたけていない。下半身主導の動きでフォーム全体に力強さを出したい。また、打席では初球から手を出していく傾向がある。その積極性は評価できるが、ボール球にも手を出しては意味がない。器用にボールをとらえるため、手打ちでも対応してしまうが、それにより選球眼が粗くなっている。しっかりとボールを引きつけて打つことを意識したい。



 内野守備で見せる柔らかさ、センスは兄以上のものを感じさせ、ショート向きの選手と言えそうだ。ただ、送球に関しては手投げの印象もあるため、捕球したらしっかりステップを踏んで一塁に投げるという一連の動作を確認したい。

 走塁では一歩目が特に要求されるが、ベースワークも打球判断も能力の高さを示している。今後、脚力を磨いていけばさらに上達するだろう。このように3拍子のバランスは整っているが、すべての面でレベルアップが必要なのは言うまでもない。

 守りにおける判断力は良いものがある。確実性を上げるためには、内野手としての型、捕球姿勢などを今一度見直すこと。それをクリアすれば、自身の判断力がチームの勝利にさらに近づけることになる。

 集中力はあるようだが、自チームが劣勢だったり、自らの調子が悪いときに気持ちが下がるように見受けられる。そこは修正すべきポイント。体力面でも、まだまだ体が小さい。スタミナ強化を最重要課題として取り組んでもらいたい。

 将来的には内野のユーティリティープレーヤーを目指すのだろう。練習では積極的にサードやセカンドを守り、ショートというポジションをほかから見ることも必要。攻撃面ではつなぎの打者、二番打者タイプの選手と言えそうだ。進塁打の意識も求められるだろう。今後は「北條弟」という肩書きに満足することなく、兄を超えるくらいの意識を持って取り組んでもらいたい。チームの中で自己犠牲できる姿勢がいい。

 素材は良いが実戦での技術評価はまだ高いとは言えない。それが2選手の現状だ。体力が上がってくれば自然と技術もついてくるはず。春の甲子園での飛躍に期待したい。

■採点表
打撃フォーム 7.5
選球眼 7.5
守備力 7.5
走塁 7.5
3拍子のバランス 7.5
判断力 7.5
メンタル 7.0
体力 7.5
将来性 8.5
総合力 7.5
合計 75.5
※採点の基準は2014年のドラフト対象選手

PROFILE
ほうじょう・ひろゆき●1996年11月9日生まれ。大阪府出身。175㎝ 76㎏。右投右打。美木多中時代はオール狭山ボーイズに所属。八戸学院光星高では1年春からベンチ入り。1年夏の甲子園はベンチ外。同秋から「一番・遊撃」の定位置を獲得し、2年秋には主将として県準優勝。東北大会では4試合で11安打2本塁打7打点と活躍し、優勝に貢献。神宮大会では初戦敗退。

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プロフェッショナルレポート

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元巨人チーフスカウトで現在はベースボールアナリストとして活動する中村和久によるドラフト候補生の能力診断。

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