1点差試合は0勝6敗
リリーフに成功し、天に感謝をささげるフランスア。このシーンがこれから何度も見られるようならカープの急浮上も!?
広島が苦しんでいる。開幕直後のスタートは悪くなかったが、7月に入ると負けが込み始め、7月31日現在、12勝18敗4分けの「借金6」で
中日と同率最下位に沈んでいる。
目立つのは、接戦に勝てないことだ。ここまで1点差試合は0勝6敗。大ざっぱに言えば、1点勝負の競り合いをものにしたことは今季一度もない、と言っていい。
その要因は、何と言っても抑え投手の不在を含めたリリーフ陣の不調だ。今季のセ・リーグは、
DeNAの
山崎康晃や
阪神の
藤川球児など、当初予定していたクローザーが不調で機能していないチームが多いが、広島も開幕から厳しい状態が続いている。ゲームの最後を投げた投手(完投除く)の防御率が6.67というのだから壊滅的だ。
開幕前は、昨年の実績があるフランスアに、新外国人のD.ジョンソン、スコットの3人の外国人投手を競わせ、最もいい投手をクローザーにするという計画で、結局、オープン戦、練習試合で相対的に一番内容の良かったスコットで開幕した。
ところがこのスコットが大誤算。開幕3戦目(6月21日、DeNA戦)で1点リードの9回に登場して一死も取れずにサヨナラ負けし、
森下暢仁のプロ初登板初勝利をフイにすると、7月2日の
ヤクルト戦(神宮)では
村上宗隆にサヨナラ満塁弾を浴びて早々に守護神失格に。そこで
佐々岡真司監督は、昨年セットアップで最も安定していた
菊池保則を代役に指名したが、1つセーブを挙げた後は、セーブシチュエーションでの逃げ切り失敗が続き、ちょっとツラい状態になってこれも続かず。そのあとはキャリアを頼って
一岡竜司を指名したが、これも1つセーブを挙げた後は、7月24日のDeNA戦で
佐野恵太に逆転サヨナラ満塁弾を食らって撃沈されるなど、往年の球威は見られず、苦しい投球が続く。
抑えが固まらないので、その前を投げるセットアップも混乱気味だ。若手の
塹江敦哉が開幕から8試合連続無失点と勢いに乗っていたが、7月16日の
巨人戦(マツダ広島)、大きくリードされた場面での登板で初失点したのをきっかけに勢いが鈍ってしまった。若い投手なので、たまたま疲れの出る時期がこのあたりだったのかもしれないが……。それでもリリーフ陣の中では大健闘しているほうだ。あとのリリーフは、
島内颯太郎、
ケムナ誠ら若手は球威抜群のボールも見せるが、まだゲーム後半で勝負を託すにはキャリアがなく、逆に本来勝負を託されるべきキャリアのある投手は長年の勤続疲労で球威がない……と、誰を軸にしてよいのやら、という状況が続いている。
フランスアがクローザーにハマれば
だが、ここにきてようやく、その状況に一筋の光明が見えてきた。フランスアだ。オープン戦から練習試合と調子が上がらず、シーズンに入っても長打を浴びるケースが目立ち、7月18日時点で防御率6.23と不調が続いていたが、7月21日の阪神戦(甲子園)から無失点を続け、7月29日の中日戦(マツダ広島)では、3者連続三振で2点リードを守って今季初セーブを挙げた。翌日も同点で登場し、1イニングを無失点だ。本人も「直球がよくなってきた」と手応えを感じている様子。まだこれだけで全幅の信頼、というわけにはいかないが、もともと昨年後半はクローザーを務めていた投手。この投手がクローザーにハマってくれれば話は最も早いはずだ。
ここまでは勝敗的に苦しい戦いが続いているとはいえ、広島は打線はリーグトップの打率であり、攻撃力はある。また、先発陣も、登録抹消となって再調整する選手が続出してはいるが、今季は
大瀬良大地、K.ジョンソン、森下暢仁、
床田寛樹、
九里亜蓮、
遠藤淳志、
野村祐輔と、ある程度計算のできる先発投手7人の構成でスタートしており、「調子の落ちた投手を短期登録抹消してコンディションを整えさせながら戦う」というのは、予定よりは少し入れ替えが頻繁のような気もするが、最初から織り込み済みだと見る。
それだけに、フランスアの今後の出来次第で、抑えがまず固まり、それによってセットアップも整備されてくれば、カープの急浮上もまるで夢物語とは言えない、と思うのだがどうだろうか。ただ、今季は試合数が少なく、ペナントレースの折り返し点はあっという間にやってくる。さらにはクライマックスシリーズもないとなれば、首位との差がある程度以上開いてしまう前に手を打たねばならない。あまり時間をかけずに整備ができるかどうかに、このシーズンの結果がかかっているのもまた確かだろう。
文=藤本泰祐 写真=BBM