社会人No.1右腕の栗林

ドラフト1位の栗林。背番号20を与えられたところからも期待の大きさがうかがえる
広島に2021年シーズンから加わることになる新人選手の入団発表が、12月15日に行われ、育成選手を含む7人が、それぞれにプロの世界に飛び込む決意を語った。2020年は投手陣が崩れて5位に終わったカープ。それを受けて、この秋のドラフトでは即戦力投手を中心とした指名になっているだけに、2021年の陣容に多くの選手が食い込んでくることが考えられる。そこで今回は、各選手にチーム内で期待される立ち位置なども考えながら、各選手を紹介していこう。
まず何と言っても期待されるのが、今秋ドラフトの「社会人No.1」と言われたドラフト1位の
栗林良吏投手(トヨタ自動車)だ。かつて球団最多の通算213勝を挙げた
北別府学、同じく球団最多の通算165セーブを挙げた
永川勝浩現コーチの背負った背番号「20」を与えられたところに期待の大きさがにじむ。本人も「ドラフト1位でまずプレッシャーがあり、また今年、森下(暢仁)が新人王を取るぐらいの活躍をしてプレッシャーが重なる中で、最後に背番号20をいただいて……」と、どんどんかかる重圧には驚きを見せながらも、「自分も北別府さんや永川さんのように、何かチームで一番の成績を残したい」と、それをはね返していく意気込みは十分だ。
まずは先発での適性を見ていくところからのスタートとなるが、MAX153キロのストレートと、落ちる球(フォーク)を主武器とし、「自分の売りは投げっぷりの良さ」と言うとおり、マウンド度胸もありそうなところから、場合によってはリリーフ起用の可能性も考えられる。社会人ルーキー投手が1年目から大爆発、という例は近年はあまりないが、そこを打ち破るぐらいの勢いを見せたい。
ドラフト2位の
森浦大輔(天理大)は、高校時代に1度打たれたことがある「
岡本和真(
巨人)にプロでリベンジを」と意気込む。学年としては岡本が2年上だが、岡本が智弁学園高、森浦は天理高と、2人は奈良のライバル校の出身だ。森浦はコントロールが武器の技巧派サウスポー。チームの左腕事情を見ると、先発には
床田寛樹と、来季復活をかける
高橋昂也がいるので、チャンスとしてはリリーフのほうがありそうだ。リリーフ左腕には
フランスアと
塹江敦哉がいるが、2人は勝ちパターンの終盤を担うだけに、現状、ゲーム中盤に使える左腕は不足している。まずは高卒6年目となる
高橋樹也や19年に活躍を見せた
中村恭平と一軍枠を争うことになるか。本人も「自分に足りないところ」と自覚しているストレートのキレをどこまで磨けるかがカギになる。
ドラフト3位の
大道温貴(八戸学院大)は、北東北リーグでは7回参考ながらノーヒットノーランやリーグ最多タイの18奪三振を記録するなど、ほぼ無敵を誇った右腕。同じ大学出身で2年先輩の
高橋優貴(巨人)がルーキー年に5勝しており、「それを超えるのが目標」と言う。先発もリリーフもできそうだが、「自分は常に三振を取りにいくスタイル」という発言からしても、リリーフでチャンスを探ることになる可能性が高いか。MAX153キロは、球の強い投手をリリーフに置きたいという
佐々岡真司監督の方針にも一致する。大卒3年目となる
島内颯太郎や、今季実績をつくった大卒4年目の
ケムナ誠と争えるところを目指したい。
イチローも絶賛した高卒右腕
そして大卒選手のもう1人が、ドラフト6位の
矢野雅哉だ。遠投130メートルという強肩を利したショートの守備力と、いざとなれば捕手や外野手もできるというスーパー・ユーティリティーぶりがウリ。ショート、セカンドには来年高卒3年目となる
小園海斗や
羽月隆太郎などもいるが、とりあえずはその上の年代を1人入れたということで、
田中広輔や
菊池涼介のサブとしての役割をまず期待されることが濃厚だ。ショートの守備では
三好匠と、スーパー・ユーティリティーという部分では
曽根海成と一軍枠を争うことになるか。
四国IL徳島からドラフト5位で入った投手の
行木俊は素材型の選手ということで、まずは力を蓄える方針となるか。ドラフト4位の
小林樹斗は、智弁和歌山高の練習を指導した
イチロー氏から「両サイドへの真っすぐがなかなか打ちづらい。ツーシーム、カットボールは使える」と言われたという逸材。カープでは高卒ルーキー投手は1年目の夏場までは体づくりの方針があるが、20年に3年目で先発ローテーションを全うした
遠藤淳志のような成長曲線を描いてほしいものだ。
また、育成1位で入団した
二俣翔一(磐田東高)は、「キャッチャーで初のトリプルスリーを目指したい」と夢を描く。二塁送球のベストタイムは1.7秒台で足も使える、三拍子そろった捕手、となれば、タイプとしては来季が高卒4年目の
中村奨成に近い。中村奨に追いつき、追い越していけるか。今季、一軍第2捕手の座をつかんだ
坂倉将吾もまだ来季23歳だけに、層の厚い捕手陣の争いに挑んでいくことになる。
文=藤本泰祐 写真=BBM