
今オフ、ポスティングでのメジャー移籍がかなわなかった菅野
2020年1月8日、ポスティングシステムでのMLB移籍を目指していた
巨人の
菅野智之が、期限までにメジャー球団と契約合意に至らず、移籍を断念した。このように、MLB移籍を希望したものの、折り合いがつかず断念するケースは少なくない。では、希望がかなわなかった場合、その年はより奮起して前年以上の成績を残すのだろうか? それとも気落ちして低迷してしまうのだろうか? MLB移籍を断念した選手の「シーズン成績」を調べてみた。
エースや主力選手はポスティング断念で成績を落とす?
今回の菅野と同様に、ポスティングシステムを利用してMLB移籍を希望し、最終的にMLB移籍がかなわなかった選手はこれまでに7人いる。それぞれの「日本球界に残留したシーズンの成績」を以下にまとめてみた。
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ティモニエル・ペレス(
広島)
1998年オフに移籍断念⇒広島と再契約
1998年成績=98試合 68安打 5本塁打 35打点 打率.296
1999年成績=12試合 4安打 0本塁打 2打点 打率.174
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大塚晶文(近鉄)
2002年オフに移籍断念⇒
中日にトレード
2002年成績=41試合 2勝1敗22セーブ 防御率1.28
2003年成績=51試合 1勝3敗17セーブ 防御率2.09
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三井浩二(
西武)
2008年オフに移籍断念⇒西武と再契約
2008年成績=23試合 1勝1敗3ホールド 防御率7.50
2009年成績=19試合 0勝1敗5ホールド 防御率6.23

2011年、楽天時代の岩隈
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岩隈久志(楽天)
2010年オフに移籍断念⇒楽天と再契約
2010年成績=28試合 10勝9敗 防御率2.82
2011年成績=17試合 6勝7敗 防御率2.42
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真田裕貴(
DeNA)
2011年オフに移籍断念⇒自由契約後に巨人加入
2011年成績=53試合 2勝0敗3ホールド 防御率4.22
2012年成績= 1試合 0勝0敗 防御率記録なし

2012年、西武時代の中島
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中島裕之(西武)
2011年オフに移籍断念⇒西武と再契約
2011年成績=144試合 168安打 16本塁打 100打点 打率.297
2012年成績=136試合 155安打 13本塁打 74打点 打率.311
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菊池涼介(広島)
2019年オフに移籍断念⇒広島と再契約
2019年成績=138試合 143安打 13本塁打 48打点 打率.261
2020年成績=106試合 102安打 10本塁打 41打点 打率.271
投手の場合は、前年とそん色のない成績を残したのは大塚のみで、それ以外は軒並み成績が下降している。エースだった岩隈も開幕直後に負傷で長期離脱し、満足にプレーできなかった。一方、野手の場合は、広島のペレスを除き、中島(現在は巨人)も菊池も高いアベレージを維持。特に菊池は二塁手として史上初となるシーズン守備率10割をマークと、気落ちするどころか驚異的な成績を残した。
ポスティングではなく海外FA権を行使しての海外移籍を希望する場合もある。その場合でも、契約がまとまらなかったり、移籍先のチームが見つからなかったりして、チームに残留するケースは少なくない。
例えば、2017年オフには
ロッテ所属の
涌井秀章(現在は楽天)が海外FA権を行使するも、獲得球団がなく残留。2015年には
ソフトバンクの
松田宣浩がメジャー移籍を目論むも、
王貞治会長の残留要請もあり、最終的にチームに残った。ほかには、2014年には
阪神の
鳥谷敬(現在はロッテ)が海外FAを行使したが、折り合いがつかず残留している。涌井は、残留した2018年は7勝9敗と先発としては物足りない成績に終わったが、松田と鳥谷の野手2人は、残留となった年も変わらずチームの主力として活躍した。
2020年シーズンのオフは、菅野以外にも
日本ハムの
西川遥輝がポスティングでの移籍を断念しており、チーム残留で合意。MLBは新型コロナウイルスの影響も大きく、海外移籍が非常に難しいオフシーズンとなった。西川は2021年シーズン中に海外FA権取得の可能性が高く、移籍を有利に進めるためにも、今年はこれまで以上の活躍を期待したい。
文=中田ボンベ@dcp 写真=BBM