時の流れは早い、2010年のドラフトから10年が経った。当時は早大の
大石達也、斎藤佑樹、
福井優也の「早大三羽ガラス」が注目され、大石に6球団、斎藤に4球団が競合。ところがプロ入団後は思うような結果を残せず、大石は19年限りで現役引退した。入団時のメディアの注目度は高くなかったが、
広島経済大・
柳田悠岐は
ソフトバンク、八戸大・
秋山翔吾(現レッズ)は
西武で球界を代表する選手に。ソフトバンクの育成枠で入団した蒲郡高・
千賀滉大、楊志館高・
甲斐拓也は侍ジャパンに不可欠な選手に大出世した。
※の数字は20年までのプロ通算成績 ・
巨人 1位
澤村拓一(中大)
※352試合登板、48勝52敗75セーブ64ホールド、防御率2.77
2位
宮國椋丞(糸満高)
※205試合登板、21勝21敗1セーブ19ホールド、防御率3.59
3位
田中太一(大分工)
※一軍登板なし
4位
小山雄輝(天理大)
※60試合登板、8勝8敗1セーブ5ホールド、防御率3.08
★育成
1位
和田凌太(広島工高)
※一軍出場なし
2位
岸敬祐(愛媛マンダリンパイレーツ)
※一軍登板なし
3位 福泉敬大(神戸9クルーズ)
※一軍登板なし
4位
荻野貴幸(愛知工大)
※一軍出場なし
5位 財前貴男(エイデン愛工大OB BLITZ)
※一軍出場なし
6位
成瀬功亮(旭川実高)
※一軍登板なし
7位 川口寛人(西多摩倶楽部)
※一軍出場なし
8位
丸毛謙一(大阪経済大)
※1試合出場、打率.000、0本塁打、0打点、0盗塁
澤村は先発で新人から2年連続2ケタ勝利をマークし、救援に配置転換されてからも2016年に37セーブで最多セーブ投手のタイトルを獲得。昨季は不調に苦しんだが、シーズン途中に
ロッテに移籍して輝きを取り戻した。育成枠で8選手を獲得したが、一軍出場した選手はゼロだった(丸毛は
オリックスに移籍してから出場)。
・
阪神 1位
榎田大樹(東京ガス)
※237試合登板、29勝25敗3セーブ60ホールド、防御率4.16
2位
一二三慎太(東海大相模)
※一軍出場なし
3位
中谷将大(福岡工大城東高)
※423試合出場、打率.230、37本塁打、136打点、4盗塁
4位
岩本輝(南陽工高)
※47試合登板、5勝6敗6ホールド、防御率4.05
5位
荒木郁也(明大)
※186試合出場、打率.182、0本塁打、2打点、14盗塁
★育成
1位
阪口哲也(市和歌山高)
※一軍出場なし
2位
島本浩也(福知山成美高)
※105試合登板、5勝0敗1セーブ14ホールド、防御率3.54
3位
穴田真規(箕面東高)
※一軍出場なし
榎田は1、2年目にセットアッパーとして活躍後に登板機会が減っていたが、西武にトレード移籍して2018年に自己最多の11勝をマーク。リーグ優勝に貢献した。中谷は和製大砲と期待され、17年に20本塁打をマークもその後は伸び悩んでいる。育成2位で獲得した島本はセットアッパーで19年に63試合登板。左ヒジの手術を受け、今年は再び育成契約から復活を目指す。
・中日
1位 大野雄大(佛教大)
※182試合登板、69勝67敗2ホールド、防御率3.12
2位
吉川大幾(PL学園高)
※268試合出場、打率.180、0本塁打、6打点、14盗塁
3位
武藤祐太(Honda)
※197試合登板、10勝9敗21ホールド、防御率4.25
4位
森越祐人(名城大)
※94試合出場、打率.115、0本塁打、2打点、1盗塁
5位
関啓扶(菰野高)
※一軍出場なし
1位で単独指名した大野は2013年から3年連続2ケタ勝利をマーク。苦しんだ時期を経て、19、20年に最優秀防御率を獲得し、20年は沢村賞にも輝くなど球界を代表するエースになった。武藤は
DeNAに移籍後、現在も救援で活躍している。吉川はPL学園高の先輩・
立浪和義の背番号「3」を継承したが、3年限りで退団。巨人でプレーして昨季限りで現役引退した。
・横浜(現DeNA)
1位
須田幸太(JFE東日本)
※166試合登板、16勝19敗1セーブ37ホールド、防御率4.81
2位
加賀美希昇(法大)
※24試合登板、5勝10敗、防御率4.32
3位
荒波翔(トヨタ自動車)
※522試合出場、打率.261、10本塁打、96打点、62盗塁
4位
小林寛(大阪学院大)
※45試合登板、2勝3敗1ホールド、防御率3.39
5位
大原慎司(TDK)
※243試合登板、10勝3敗2セーブ55ホールド、防御率3.26
6位
福山博之(大阪商大)
※349試合登板、17勝13敗9セーブ98ホールド、防御率2.98
7位
大原淳也(香川オリーブガイナーズ)
※1試合出場、打率.――、0本塁打、0打点、0盗塁
8位 靍岡賢二郎(愛媛マンダリンパイレーツ)
※24試合出場、打率.267、0本塁打、2打点、0盗塁
★育成
1位
松下一郎(関西外大)
※一軍出場なし
須田、加賀美、小林の3投手はDeNAを退団後、社会人野球のチームに移籍して野球を続ける。荒波は俊足巧打のリードオフマンで守備でも2年連続ゴールデン・グラブ賞を獲得。大原も新人でシーズン最多の71試合登板するなど救援として稼働した。福山はわずか2年で退団したが、
楽天に移籍後セットアッパーとして大活躍。2017年は65試合登板で防御率1.06と驚異的な安定感だった。
・広島
1位 福井優也(早大)
※124試合登板、32勝41敗、防御率4.59
2位
中村恭平(富士大)
※97試合登板、2勝11敗13ホールド、防御率4.23
3位
岩見優輝(大阪ガス)
※11試合登板、1勝0敗、防御率4.02
4位
金丸将也(東海理化)
※一軍登板なし
5位
磯村嘉孝(中京大中京高)
※184試合出場、打率.233、8本塁打、31打点、0盗塁
6位
中崎翔太(日南学園高)
※360試合登板、19勝27敗115セーブ66ホールド、防御率3.02
7位
弦本悠希(徳島インディゴソックス)
※4試合登板、0勝0敗、防御率4.50
★育成
1位
山野恭介(明豊高)
※一軍登板なし
2位
池ノ内亮介(中京学院大)
※2試合登板、0勝0敗、防御率0.00
福井はエースとして期待されたが2015年の9勝が自己最多で、18年オフに楽天に移籍。6位の中崎は想像以上の活躍だった。15年から守護神を務め、16~18年のリーグ3連覇に大きく貢献。昨年は6試合登板に終わったが再起を誓う。2位の中村は球の質を考えれば、もっと活躍しても不思議でない投手だ。
・ヤクルト
1位 山田哲人(履正社高)
※1058試合出場、打率.293、214本塁打、635打点、176盗塁
2位
七條祐樹(伯和ビクトリーズ)
※56試合登板、8勝5敗1セーブ2ホールド、防御率4.52
3位
西田明央(北照高)
※257試合出場、打率.215、17本塁打、62打点、1盗塁
4位
又野知弥(北照高)
※一軍出場なし
5位
久古健太郎(日本製紙石巻)
※228試合登板、8勝6敗2セーブ49ホールド、防御率4.20
6位
川崎成晃(熊本ゴールデンラークス)
※38試合出場、打率.194、0本塁打、1打点、1盗塁
★育成
1位 北野洸貴(神奈川大)
※一軍出場なし
2位 上野啓輔(香川オリーブガイナーズ)
※一軍登板なし
3位
佐藤貴規(仙台育英高)
※一軍出場なし
早大・斎藤を抽選で外し、「外れ1位」で入団した山田が3度のトリプルスリーと前人未到の記録を樹立するなど球界を代表する選手に。昨オフはFAで去就が注目されたが、7年の大型契約を結んでチームを引っ張る。育成3位の佐藤は
由規の弟で注目度は高かったが一軍出場はならず、14年限りで退団した。
・ソフトバンク
1位
山下斐紹(習志野高)
※119試合出場、打率.199、5本塁打、15打点、0盗塁
2位 柳田悠岐(広島経済大)
※997試合出場、打率.322、186本塁打、611打点、150盗塁
3位
南貴樹(浦和学院高)
※一軍登板なし
4位
星野大地(岡山東商高)
※11試合登板、0勝1敗、防御率4.73
5位
坂田将人(祐誠高)
※一軍出場なし
★育成
1位
安田圭佑(高知ファイティングドッグス)
※一軍出場なし
2位
中原大樹(鹿児島城西高)
※一軍出場なし
3位
伊藤大智郎(誉高)
※一軍登板なし
4位 千賀滉大(蒲郡高)
※189試合登板、66勝35敗1セーブ20ホールド、防御率2.69
5位
牧原大成(熊本・城北高)
※366試合出場、打率.254、7本塁打、71打点、31盗塁
6位 甲斐拓也(楊志館高)
※492試合出場、打率.231、34本塁打、132打点、19盗塁
大豊作と言えるだろう。2位の柳田は攻守走3拍子そろった規格外のスーパースターに。首位打者を2度獲得し、2015年にはトリプルスリーを達成している。育成入団の千賀は16年から5年連続2ケタ勝利をマークし、昨年は最多勝を獲得。球界のエースにのぼりつめた。バッテリーを組む甲斐も「甲斐キャノン」と称される強肩を武器に日本を代表する捕手に。一軍定着した牧原も含め、育成枠でこれだけ当たり年のドラフトは今後もないだろう。
・ロッテ
1位
伊志嶺翔大(東海大)
※448試合出場、打率.242、6本塁打、59打点、59盗塁
2位
南昌輝(立正大)
※189試合登板、11勝8敗36ホールド、防御率3.59
3位
小林敦(七十七銀行)
※9試合登板、1勝5敗、防御率5.80
4位
小池翔大(青山学院大)
※1試合出場、打率.000、0本塁打、0打点、0盗塁
5位
江村直也(大阪桐蔭高)
※220試合出場、打率.151、1本塁打、16打点、0盗塁
6位
藤谷周平(南カリフォルニア大)
※一軍出場なし
★育成
1位
黒沢翔太(城西国際大)
※14試合登板、0勝1敗、防御率4.44
2位 山口祥吾(立花学園高)
※一軍登板なし
3位 石田淳也(NOMOベースボールクラブ)
※一軍登板なし
即戦力の外野手として期待された伊志嶺は1年目に32盗塁をマークしたが、2年目以降は打撃不振や度重なる故障で一軍に定着できず。2019年限りで現役引退し、コーチに転身した。南は16年に16ホールドを挙げるなど救援で活躍したが、18年に難病の黄色靭帯骨化症に罹患していることが判明。手術を受けた。もう1度セットアッパーとしてマウンドで躍動したい。

西武時代の秋山翔吾
・西武
1位 大石達也(早大)
※132試合登板、5勝6敗8セーブ12ホールド、防御率3.64
2位
牧田和久(日本通運)
※NPB通算328試合登板、55勝51敗27セーブ76ホールド、防御率2.80
※MLB通算27試合登板、0勝1敗2ホールド、防御率5.40
3位 秋山翔吾(八戸大)
※NPB通算1207試合出場、打率.301、116本塁打、513打点、112盗塁
※MLB通算54試合出場、打率.245、0本塁打、9打点、7盗塁
4位
前川恭兵(阪南大高)
※一軍登板なし
5位
林崎遼(東洋大)
※55試合出場、打率.203、0本塁打、2打点、0盗塁
6位
熊代聖人(王子製紙)
※502試合出場、打率.225、0本塁打、29打点、15盗塁
6球団が1位競合した大石は度重なる右肩痛の影響もあり、思うような結果を残せなかった。だが、2位の牧田と3位の秋山が大当たり。牧田は先発、中継ぎ、抑えとチーム事情に合わせてフル回転。メジャーを経て昨年から楽天でプレーしている。秋山は2015年にNPB歴代最多の216安打をマークし、17年には首位打者を獲得するなど安打製造機として活躍。昨年に海外FA権を行使してレッズに移籍した。
・楽天
1位
塩見貴洋(八戸大)
※148試合登板、46勝56敗、防御率3.78
2位
美馬学(東京ガス)
※204試合登板、61勝64敗5ホールド、防御率3.83
3位
阿部俊人(東北福祉大)
※260試合出場、打率.210、0本塁打、13打点、9盗塁
4位
榎本葵(九州国際大付高)
※77試合出場、打率.118、0本塁打、2打点、0盗塁
5位
勧野甲輝(PL学園高)
※一軍出場なし
★育成
1位
加藤貴大(富山サンダーバーズ)
※一軍登板なし
2位
木村謙吾(仙台育英高)
※一軍登板なし
3位
川口隼人(滋賀・高島ベースボールクラブ)
※一軍出場なし
塩見は2ケタ勝利こそ1度もないが、新人の年から先発ローテーションで稼働。近年は腰痛に苦しみ登板機会が減っている。美馬も塩見と同様に先発で投げ続け、2017年には自己最多の11勝をマーク。ロッテにFA移籍した昨年は自身2度目の2ケタ勝利を挙げてチームの2位躍進に大きく貢献した。
・日本ハム
1位 斎藤佑樹(早大)
※88試合登板、15勝26敗、防御率4.34
2位
西川遥輝(智弁和歌山高)
※1097試合出場、打率.286、51本塁打、346打点、287盗塁
3位
乾真大(東洋大)
※74試合登板、1勝2敗2ホールド、防御率5.65
4位
榎下陽大(九州産大)
※35試合登板、2勝1敗、防御率3.76
5位
谷口雄也(愛工大名電高)
※264試合出場、打率.243、7本塁打、42打点、15盗塁
6位
齊藤勝(セガサミー)
※9試合登板、0勝0敗、防御率6.14
「ハンカチ王子」としてアマチュア時代は社会現象になるほどの人気だった斎藤だが、プロ入り後は苦しんでいる。1年目の6勝が自己最多で、18年から3年連続未勝利と背水の陣を迎えている。西川は3度の盗塁王を獲得するなど不動のリードオフマンに成長。昨オフにポスティングシステムを利用してメジャー挑戦を目指したが残留を決断した。5位の谷口は甘いマスクで人気の巧打者だが、昨年は7試合出場のみ。意地を見せたい。
・オリックス
1位
後藤駿太(前橋商高)
※822試合出場、打率.222、14本塁打、137打点、32盗塁
2位
三ツ俣大樹(修徳高)
※114試合出場、打率.203、1本塁打、6打点、0盗塁
3位
宮崎祐樹(セガサミー)
※234試合出場、打率.240、8本塁打、48打点、5盗塁
4位
塚原頌平(つくば秀英高)
※115試合登板、5勝6敗1セーブ28ホールド、防御率3.21
5位
深江真登(明石レッドソルジャーズ)
※81試合出場、打率.272、0本塁打、3打点、4盗塁
1位は大石、伊志嶺、山田と3度抽選でクジを外し、後藤を獲得。俊足を生かした外野の広い守備範囲と強肩で将来を嘱望されたが、課題の打撃で確実性を上げられずレギュラー定着までいかない。2位の三ツ俣は強打の内野手として評価が高かったが、2014年途中に中日に移籍した。
写真=BBM