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【大学野球】ドラフトへ猛アピールの法大・山城航太郎 ラストシーズンで結果残せた3つの理由

 

防御率1.38の安定感


法大・山城は3対4の6回表から救援して、10回まで5回無失点。チームは10回裏にサヨナラ勝ちし、うれしいリーグ戦初勝利を手にした[写真=矢野寿明]


【10月20日】東京六大学リーグ戦第6週
法大5x-4慶大(法大2勝)

 4対4のまま9回で決着がつかず、延長に入った。10回表。6回から二番手で救援した山城航太郎(4年・福岡大大濠高)は一人の走者を許すも、無失点に抑えた。その裏、一死満塁から藤森康淳(2年・天理高)の中前適時打でサヨナラ勝ち。2時間29分の熱戦に終止符が打たれ、法大は勝ち点3。この日の段階で、リーグ優勝への望みをつないだ。

 勝利投手は山城だ。5回を4安打無失点に抑え、4年秋でうれしいリーグ戦初白星である。

「チームに勢いを与え、粘りのピッチングができました。初勝利を挙げられるとは、考えもしませんでした。チームのために投げた結果、もらえた勝利。すごくうれしいです」

 今秋は5試合に救援して13回2失点、防御率1.38の安定感を見せている。13イニングで12奪三振。相手打線を圧倒している。

 山城は高校時代、遊撃手兼投手。エースにはオリックス山下舜平大がいた。山城はプロ志望届を提出。10月24日のドラフトへ、猛アピールを続けている。なぜ、ラストシーズンで結果を残せたのか。3つの理由がある。

 まずは、メンタル面だ。

「四球を怖がり、思い描いていないボールがいくと不安がありましたが、自信を持って、腕を振れている。最上級生になって『やらないといけない』という思いも強くなっている」

 次に今春、就任した高村祐助監督との出会いが大きかった。NPBでのコーチ経験が豊富であり、さまざまな発見と学びを得た。

「これまで受けたことがない指導レベルでした。試合中もコミュニケーションを取り、引き出しの面でも助けられています」

 持ち味は、最速154キロのストレートで押していくスタイルだが、技術的にはスライダーの精度が上がったのが大きい。鋭く縦変化するボールをとらえるのは、至難の業である。

「秋のシーズン以降、困ったときにシュートを使えるようになりました。投球の幅が広がり、(気持ち的にも)余裕が出る」

挫折を乗り越えて


 遅咲きのドラフト候補。挫折があった。

「1年生のときに、自分を見失ってしまい、Cチームまで落ちた。思うように投げることができない。今、こうして勝利投手になれるとは、考えられなかったことです」

 3年秋にリーグ戦初登板の苦労人は、ラストシーズンに素材を開花させた。法大・大島公一監督は努力する姿を見てきただけに、感慨深いものがある。慶大とのカードを終え、第8週に明大との最終カードが組まれているが、次は10月24日に控えるドラフトだ。指揮官は元プロ視点で、山城の投球を語る。

「身長(183センチ)、腕の長さ。僕にないもの(現役時代は165センチ)を持っていますから……(苦笑)。もともとショートですので、守備の動きが良い。投手としてやっていく上で、大切なことです。一球が一級品。うまくコーディネートする能力がある。投手経験が少ないですから、まだ伸びしろがある」

 運命の日まで、残りあとわずか。

「めっちゃ、緊張します(苦笑)。楽しみにしていますが、1人なると、考えてしまうほうなので、友達と一緒にいたいです」

 この秋、ドラフトまでに、できることはすべて出し切った。吉報を待つだけである。

文=岡本朋祐
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