
トミー・ジョン手術を受け23年に本格復帰したセール。ブレーブスは勝敗よりもデータを重視してトレード獲得した
このオフ、MLBの先発投手の市場価格は著しく上がった。
山本由伸がドジャースと12年総額3億2500万ドルで契約したことが最大のニュースだが、それだけではない。過去3年間一度も2ケタ勝利がなく、すでに34歳のソニー・グレイが3年総額7500万ドルで契約した。
年平均2500万ドル(約36億円)である。2023年ア・リーグ、サイ・
ヤング賞投票で2位だったことが大きい。30歳の
アーロン・ノラはフィリーズと7年総額1億7200万ドルで再契約。実力は申し分ないが、30歳で7年契約は長い。さらに驚きは昨季1試合に登板し1.1イニングを投げただけのフランキー・モンタスがレッズと1年1600万ドル(約23億円)でサイン。昨季8勝9敗、防御率4.99と打ち込まれた
ジャック・フラハティがタイガースと1年1400万ドルで契約した。
値段高騰。ゆえに辣腕(らつわん)の
スコット・ボラス代理人は年が明けても粘り続ける。ナ・リーグのサイ・ヤング賞に輝いた31歳の
ブレイク・スネルについては2億ドル以上を狙っているそうだ。同じく31歳のジョーダン・モントゴメリーについてもポストシーズンの活躍で強気になる。
FA市場だけではない。ホワイトソックスの
ディラン・シース、ブリュワーズのコービン・
バーンズのトレードがなかなか決まらないのは、売り手がより良い交換条件を求めているからだ。30歳の
タイラー・グラスノーは剛腕だが、ケガが多く、2ケタ勝利は1度だけ。それでもドジャースはトレードに2人の若手有望株を差し出した。その上で5年総額1億3656万ドルで契約延長した。
良い先発投手を獲るには本当に高くつくのである。そんな中、興味深い動きをしたのが
以前にもこのコラムで取り上げたブレーブスだ。
若手有望株のボーン・グリッソム内野手と交換でベテラン、34歳のクリス・セールを獲得した。契約はあと1年残っていた。12年から18年まで、7年連続でア・リーグのサイ・ヤング賞投票6位以内に入ったメジャー屈指の剛腕だが、20年は左肘側副じん帯再建術(トミー・ジョン手術)を受け全休、22年も脇腹と右手首を痛め2試合しか登板できなかった。
23年は20試合に先発したとはいえ102.2イニングを投げ、6勝5敗、防御率4.30である。レッドソックスがトレードに1700万ドルの現金を付けてくれたこともあり、さっそく2年総額3800万ドルで契約し直し、3年目はチームオプションで年俸1800万ドルとした。
ブレーブスはデータを調べた。23年、9回あたりの奪三振数は11個で、キャリア平均の11.1個に迫っている。そして23年の三振奪取率29.4%から四球率6.8%を引いた数字は22.6%で、メジャー全体で9位、ア・リーグのサイ・ヤング賞、ゲリット・
コールの21.2%よりも上だった。
直球の平均速度は93.8マイルで現在のメジャーでは平均以下だが、それでもクロスファイヤーから投げ込むフォーシームとスライダーは打ちにくい。リスクがある補強だが、復活できれば、ブレーブスはこのオフ他球団と比べ、お得な買い物をしたとなるのである。
文=奥田秀樹 写真=Getty Images