去ったデービス、来るブライアント

近鉄で通算117本塁打をマークしたデービス
1988年のシーズン中に
中日から近鉄へ移籍してきた
ラルフ・ブライアント。その74試合で34本塁打という大爆発が近鉄の起爆剤となって、近鉄はリーグ優勝を争い、最終戦ダブルヘッダーで優勝が決まるという、いわゆる“10.19”の伝説を呼んだ。結果的に優勝は逃した近鉄だったが、翌89年には雪辱。やはり終盤のダブルヘッダーで王者の
西武と激突、そこで4本塁打を放って歓喜を呼び込んだ長距離砲こそ、ブライアントだった。
前回はブライアントが中日に残った状態で覚醒したら、という想像をしてみたが、今回は逆。中日の二軍でくすぶっていたブライアントが近鉄へ移籍してくるキッカケとなったのは、84年から活躍していた
リチャード・デービスが解雇されたことで、トラブルメーカーの面はあったものの実力は間違いなかったデービスの退団を、やむを得ないと思いながらも戦力の面で惜しんだファンも多かったはずだ。
今回も、前回と同様、当時の助っ人2人制を、3人に拡大。デービスの退団がなければブライアントの移籍という話にはならなかっただろうし、助っ人3人制であれば前回のように中日にもブライアントに活躍の場が与えられていただろうが、そもそも歴史のifというナンセンスな企画に現実的なツッコミもナンセンス(?)。同時に、プロ野球選手が起こす不祥事はファンにとっては悲しいものだ。その悪夢が現実でなければ、という当時の思いがよみがえってきたような気もする。ブライアントが近鉄へ移籍して
中西太コーチと出会ったことがブレークにつながったのは事実だ。デービスに不祥事がなく、ブライアントも移籍してきて、ここでは不動の助っ人というべき
ベン・オグリビーも加えて、助っ人3人が並ぶ近鉄という夢を描いてみたい。
近鉄88年のベストオーダーには、デービスの名前がない。ここでは、87年のベストオーダーからデービスを守備位置を変えずに、そのままスライド。同じ守備位置の選手を自動的に外してみると、以下のようなラインアップとなった。
1(二)
大石第二朗 2(一)デービス
3(左)ブライアント
4(指)オグリビー
5(右)
鈴木貴久 6(三)
金村義明 7(中)
村上隆行 8(捕)
山下和彦 9(遊)
真喜志康永 実際のベストオーダーは?

1988年、近鉄で四番を務めたオグリビーも強打者だった
“最強の二番打者”デービスに、三番のブライアント、四番のオグリビーで、助っ人3人が打順で並んだ。一番の大石第二朗(大二郎)が塁に出た時点で、大石が走れることもあって、最後のリーグ優勝となった2001年の“いてまえ打線”のような長打力で相手を叩きつぶす空中戦になってきそうだ。大石が一塁でも、デービスに二塁打が出れば1点は稼げるだろう。
一方で、この自動的な作業で弾き出されてしまったのが一塁手の
新井宏昌だ。南海(現在の
ソフトバンク)と近鉄で通算2000安打を積み上げたヒットメーカーで、88年は打率.286と、新井にとっては苦戦したシーズンだったといえるかもしれないが、この新井が打線から外れるのは惜しい。もともと新井は外野手で、もし新井が慣れた外野を守っていたら、新井が例年の安定感を発揮していた可能性もありそうだ。
新井が守っていた中堅に入っているのが村上隆行(崇幸)。村上は87年のベストオーダーでは遊撃で並んでいる。遊撃の真喜志康永は、88年は打率.190と苦しんでおり、守備位置が87年に戻ることで、打線は強化できるかもしれない。とはいえ、“10.19”の近鉄ナインを見ていたら、誰ひとり外れてほしくない、と思うのではないだろうか。ただ、デービスの打棒は惜しい。でも、あのダブルヘッダーで
ロッテに連勝して優勝する姿も見たい。とはいえ……。では、続きはファンの皆様の夢の中で。
(近鉄1988年のベストオーダー)
1(二)大石第二朗
2(一)新井宏昌
3(左)ブライアント
4(指)オグリビー
5(右)鈴木貴久
6(三)金村義明
7(中)村上隆行
8(捕)山下和彦
9(遊)真喜志康永
文=犬企画マンホール 写真=BBM