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▲3月9日、済美高との練習試合では左打者にはツーシーム、右打者にはカットボールが効果的で4安打完封。


取材・文=岡本朋祐 写真=太田裕史

 ケガの功名だ。3月8日の慶應義塾高との対外試合初戦で、岸潤一郎は右上腕部裏側に死球を受けた。翌9日には「安樂とも対戦したいし、楽しみにしていた」という済美高との一戦を控えていた。馬淵史郎監督は「(打順)1回りがメド」と慎重だったが、試合が始まると岸は躍動する。終わってみれば4安打完封(8対0)。「四番・一塁」の安樂智大を、4打数無安打に封じている。

 エースとして臨んだ昨夏の甲子園。2回戦でレンジャーズ・ダルビッシュ有が投球センスに惚れ込んだ瀬戸内高の右腕・山岡泰輔(東京ガス入社)に投げ勝つ(2対1)と、3回戦では大阪桐蔭高に完投勝利(5対1)。

 だが、日大山形高との準々決勝で惜敗した(3対4)。そこで見つかったのが「力、力で押していくだけでは通用しない」という課題。冬場は変化球の精度アップに努めた。

 成果を披露する場が済美戦だった。「悪いになりに、ゼロに抑えられたのは良かった」。自己最速145キロには及ばない140キロながら、馬淵監督が「痛みがあって力が抜けた」と、制球重視。対右にはカットボール、対左にはツーシームが効果的だった。カーブ、スライダー、フォークも交え「変わった自分を見せられた」と、昨夏からの成長を体感できた。

 馬淵監督も「引き出しが増えた。岸は四球も出さないし、3点以上取られることはない」と全幅の信頼を寄せる。フィールディング、けん制も巧みであり、完成度の高さは折り紙つきだ。

 1年夏から四番の岸は打撃でも魅了する。済美高戦でも鋭い打球を飛ばし、自身3度目の甲子園となるセンバツでも、バットで自らを助けるはず。エース、主砲に加え、岸は人生初の主将の肩書もある。昨秋の四国大会準決勝敗退当日、馬淵監督から指名された。同校の投手兼任は1998年の寺本四郎(元ロッテ)らがいるが、岸は責任ある立場を受け入れる。

▲バットでも鋭い安打を連発した(写真右は済美高・安樂)


「過去2度は先輩に連れて行ってもらった甲子園。積極的なプレーで引っ張りたい」。目標は言うまでもなく優勝。9日はNPB8球団11人のスカウトの前でアピールも、進路については「何も考えていない」と話すにとどめた。春の頂点まで5戦、投打にわたるプレーに集中する。


PROFILE
きし・じゅんいちろう●1996年12月8日生まれ。兵庫県出身。175㎝72㎏。右投右打。難波小2年時に成徳イーグルスで野球を始め、6年時に金楽寺少年野球クラブに転籍。12球団ジュニアトーナメントのバファローズJr.で出場。尼崎中央中では西淀ボーイズに在籍し捕手、内野手。NOMOジャパンで米国遠征。明徳義塾高では1年春の四国大会でデビュー。同夏の甲子園では馬淵監督就任以来初の四番に抜てきされ、救援投手として4強進出。2年夏は四番・エースとして8強進出。昨秋の新チームから主将で四国大会4強。最速145キロ。変化球はカーブ、スライダー、カットボール、フォーク、ツーシーム。高校通算9本塁打。

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