「守備の基礎を学んだことがない」というダイヤの原石とも言える吉川尚輝を、新人年の昨季から現在に至るまでマンツーマンで厳しく指導しているのが、現役時代ゴールデン・グラブ賞7度受賞の井端弘和コーチだ。新人年からの進化・変化と、今後の可能性について聞いた。 取材・構成=坂本匠、写真=内田孝治、早浪章弘 吉川尚輝がセカンド特集の巻頭? まだ早いよ。でも、これから先が楽しみなポテンシャルを持った選手であることは間違いありませんね。
最初にちゃんと見たのは新人年だった昨季のシーズン中。スピードのある選手と聞いていたんですが、正直、見栄えがしなかった。初めのうちは正面か、それに近いノックでしたが、スピードもなければ基本もできていない。こんなもんなのか? と思っていたところで、こちらがミスノック。少し振る形になって「あっ」と思ったら、ピュッと追いついた。その一瞬のスピードには目を見張るものがありました。そこで気付いたんです。吉川は難しいボールが来ないとしっかり動かないのか、と。つまり、必要なときにしか脚を使わない。よくよく聞いてみると、守備の基礎を教わってこなかったという。正面の打球に対してラクをしていたんじゃなく、体の使い方を知らないだけだったんですね。いい脚を持っているんだから正面だったとしても、出足だけでもいいからピュッと出なさい、と。そこからのスタートでした。
ただ、スピードがあることでリスクも生まれるんです。どうしてもスピードに乗ったまま捕球のタイミングを迎えてしまうので、弾いてしまったり、最初のころは脚が動き過ぎてトンネルも多かった。スピードを生かしながらも捕るところでは正確に。体の使い方は理に適っていないといけません。その使い方を知った上で、応用があるわけですが、基礎の部分を一から身に付けていったわけですから、しばらくは苦労し・・・
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