エースとして、チームを勝利に導くために──。重責を背負う開幕マウンドに幾度も上がった男たちが、その矜恃を語る。今なお日本記録である12年連続で大役を務めた山田久志は、開幕マウンドに多くのこだわりを持っていた。 取材・構成=鶴田成秀、写真=BBM 
心に残る開幕登板は“初黒星”を喫した1981年の近鉄戦(日生
開幕投手の大きな役目
エースのプライドがにじみ出る。信頼を勝ち得た投手が託される大役と理解していたからこそ、12度の開幕投手を務めた“サブマリン”は、常にチームのことを考えていた。 開幕投手には責任と自覚が求められる。だから私も開幕戦には強いこだわりを持ち続けていました。
初めて開幕投手を務めたのは1975年でしたが、実は前年(74年)も開幕を任せられる予定だったんです。キャンプで上田さん(
上田利治監督)から開幕投手を通達されて意気込んでいましたが、最後のオープン戦の登板でヒジに張りを覚え……。投げられんことはなかった。でも、大事な開幕戦を万全の状態で迎えられないのであれば辞退すべき。チームのことを第一に考え、回避したんです。
その経緯もあって翌75年の開幕戦は気合が入ったものでした。ただ、いざマウンドに上がるとお客さんの熱量はすごく、野手も緊張から動きが硬い。とにかく独特の雰囲気で「落ち着かなければ」と自分に言い聞かせるも、マウンド上でソワソワしてしまった気がします。それでも強く思い続けたんです。
「チームに安心感を与えるんだ」
グラウンドで守る9人のうち、唯一“自分主導”でプレーできるのが投手。そんな投手がマウンド上でバタバタしてしまえば「ミスはできない」と野手はさらに硬くなり、点を取られれば「打たなければ」と攻撃に焦りを呼ぶ。チームに安心感を与えるのも、開幕投手の大きな役目と肝に銘じていた。75年は結果として・・・
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